9月18日、最高裁判事をおよそ10年間務めた園部逸夫さんが逝去したことが報じられた。
95歳だったという。
園部さんは最高裁判事を退官後、皇位継承について議論する国の「皇室典範に関する有識者会議」の座長代理を務め、2005年に女性・女系天皇を認める報告書を作成したことでも知られている。
昨年10月、本誌は園部さんを取材している。当時、自民党は安定的な皇位継承策を検討するため、党内に“総裁直轄の新組織”が立ち上げる方針を打ち出していた。
「しかしあくまで議論の前提となるのは、2021年に政府の有識者会議が取りまとめ、国会に対して提出された報告書でした。報告書では、戦後に皇室を離脱した旧宮家に連なる男系男子を養子に迎える案、女性皇族が結婚後も身分を保持するという2案が示されています」(皇室担当記者)
そうした有識者会議の報告書の内容を前提として議論が進んでいくことに、園部さんは危惧を覚えていたのだ。園部さんは、本誌に次のように語っていた。
「このままでは皇室がなくなります。現在の制度では、天皇陛下、秋篠宮さまに続く皇位継承資格者は悠仁さまお一人です。しかし将来、悠仁さまが結婚されても、男子がお生まれになるかはわかりません。
皇統を維持するためには、女性・女系天皇を認めることを否定できないのに、政治家は誰も言い出さないのです。
また女性皇族は結婚によって皇室を離れなくてはならず、皇位や宮家当主も女系による継承が認められない制度のままでは、皇族数の減少に歯止めがかかりません。
本来、悠仁さまご誕生後も、皇室の安定のために何が必要なのか、議論を止めるべきではありませんでした。歴代内閣や国会がその責任を放棄してきたために、皇室の危機は深まり続けています」
9月27日に投開票が迫っている自民党総裁選。新たな総裁は、園部さんの“遺言”に耳を傾け、皇室の危機を打開することができるのか。