■抑留者の無念に寄り添われようと…
ご訪問中、両陛下がウランバートル郊外にある日本人死亡者慰霊碑を訪れたときのことだ。慰霊碑は、第二次世界大戦後、捕虜として旧ソ連によってモンゴルに抑留され、現地で亡くなった御霊を追悼するため、2001年に建立された。
雨の中、傘を差して供花し、一分間黙?された陛下と雅子さま。その後、小高い場所にある慰霊碑の階段を下りようとしたとき、雨脚が緩み始めた。傘を閉じると、雅子さまは陛下に、
「雨がやんだようですけれども、もう一度慰霊碑に対して一礼をやりますか」
と声をかけられたという。陛下は頷かれながら、
「もう一度会釈しましょう」
と答えられ、お二人で慰霊碑に戻り、深々と頭を下げられたのだ。前出の宮内庁関係者は、この異例ともいえる“二度の拝礼”について次のように明かした。
「モンゴルに抑留された約1万4000人は、建設作業や採石、農作業などの過酷な労働を強いられました。その死亡率は12.1%と、シベリアを含めた抑留者全体の数値よりも高いとされ、厳しい寒さや飢えによって約1700人以上が亡くなっています。
両陛下は彼らの苦難や無念に、できる限りお心を寄せようとされたのでしょう。“傘を差されたままでは十分ではない”と、とっさにお二人でお考えになったようにも受け取れました。慰霊を見守った抑留者の遺族らの胸を打った出来事だったと思います」
故郷から離れた地で倒れた魂を慰めた陛下と雅子さまの“雨中の祈り”――。その御心は恵みの雨のように、人々の心にも平和への願いを芽生えさせるはずだ。
画像ページ >【写真あり】日本人死亡者慰霊碑では、異例の二度目の拝礼をされる両陛下(他12枚)
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