■「人格否定発言」の衝撃が再び……
秋の臨時国会では、状況はさらに混迷の度合いを増すと、全国紙政治部デスクは語る。
「自民党以上に保守色を鮮明にする参政党が参院選で躍進したこともあり、国会での議論の決着はいっそう不透明な情勢となりました。現時点で次期総裁は、小泉進次郎農水相、高市早苗前経済安保相が有力視されています。
ただ、どの候補者が総裁となっても、少数与党となった政権運営のために、強硬な保守層の支持をつなぎとめる必要性があります。皇室の課題に対する自民党のスタンスは、これまで以上に柔軟さがなくなっていくとみられています」
総裁選の多数派工作や国会での勢力維持に明け暮れる自民党が無視し続ける皇室の危機。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは、次のように懸念を示す。
「2005年の小泉政権下で設けられた有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を示してから20年がたちました。しかし皇族数減少や安定した皇統を維持するための本質的な解決策について、国会の議論は何度も振り出しに戻りながら、1ミリも進展していません。
2016年8月に上皇陛下がご退位の意向を示されたビデオメッセージは、決して望まれたことではなかったものの、数少ない選択肢として行われ、そのお気持ちを国民は受け止め、政治が動かざるをえない状況を作り出しました。
あのときと同じように、政治による問題解決の先送りがこれ以上続けば、『再び天皇陛下によるおことばがなければ、政治は動かせないのか』という憤りの声が国民から上がりかねないほど、危機的な状況ともいえるのです」
現在の皇室典範では、愛子さまや佳子さまといった女性皇族は、結婚によって皇籍を離れられることになる。だが国会の議論しだいでは、皇族方の人生の選択肢も大きく変わるのだ。
前出の宮内庁関係者が想起するのは、陛下が皇太子時代の2004年5月に、突如述べられた「人格否定発言」だとし、こう続ける。
「陛下は欧州歴訪前の記者会見で、《それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です》と述べられ、国内外に衝撃が走りました。
お世継ぎへのプレッシャーを受け続け、この当時の雅子さまはご体調を崩されてお務めもままならず、当時の皇太子家は厳しいお立場にあったのです。雅子さま、幼い愛子さまを守るため、穏やかで感情的にならない陛下がご自身の人生でただ一度、お怒りを形にされたご発言でした。
お立場が憲法で定められているばかりでなく、国会で与野党が対立している問題に対して意見を表明されることは、陛下のご性格からしても考えにくいでしょう。しかし陛下の、“愛子や女性皇族の未来を守らねば”というお気持ちは非常に強いものがあると拝察しています。皇族数を確保する方策すら放置され続ければ、人生二度目となるご決断を下さざるをえないとも限らないのです」
国民の幸せ、世界の平和を希求する皇室を未来へとつないでいくため、お務めに臨まれている天皇陛下。政治家たちが反省し、皇室を守るために議論を決着させることを、陛下は待ち望まれている。
画像ページ >【写真あり】国会内で開かれた悠仁さまの成年式を祝う会合で、祝辞を述べる自民党の麻生太郎最高顧問(他9枚)
