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(写真・神奈川新聞社)

依頼人らから預かった計約5600万円を着服したとして、業務上横領の罪に問われた横浜弁護士会所属の男性弁護士(44)の判決で、横浜地裁は10日、「社会的信用の高い弁護士の立場を悪用し、信頼を裏切り悪質」として懲役4年6月(求刑懲役6年)を言い渡した。弁護士は即日控訴した。

根本渉裁判長は、弁護士が成年被後見人や依頼人らの口座から、126回にわたり現金を引き出すなどしたと指摘。事務所の経営悪化から横領に及んだ動機に酌むべき点はないとし、「大胆かつ常習的な犯行。刑事責任は重い」と非難した。

弁護側は、現金の一部は依頼人のために使ったと主張したが「自ら消費する目的で預金を引き出したと認められ、着服横領が成立する」などとして退けた。

判決によると、弁護士は2012年1月ごろから15年1月ごろまでの間、6人のために預かっていた現金計約5601万円を着服した。

判決後に会見した横浜弁護士会の竹森裕子会長は、「決してあってはならないことで、誠に遺憾」と謝罪。再発防止のため、会として会員の非行に対して調査や指導などができるよう整備したことを明らかにした。

◆「被害弁償の仕組みを」

有名大学出身で大学講師の肩書も…。男性弁護士に遺産分割金2千万円を着服された男性の親族は、「ホームページで見た華々しい経歴や立派なビルに入った事務所に、信頼できると思ってしまった」と悔やむ。

複数の弁護士に相談したが、着手金がほかの弁護士の半額ほどに抑えられていたことも魅力で依頼した。しかし、手続きが終わっても、遺産を渡してくれなかった。連絡を取っても「忙しくて銀行に行けない」と告げられ、待ち続けた揚げ句に着服されたと分かった。「向こうは法律の達人。信じるしかなかった」

現時点での弁償額は、400万円程度。「これから本当に返済してくれるのか」と不安は消えない。

横浜市の女性は、姉と合わせて着手金約80万円を支払い、手続きの途中で事件が発覚。警察からは「着手金では立件できない」と言われ、泣き寝入りした。「まさか弁護士にだまされるなんて」と憤る。

弁護士の不祥事を受け、日弁連では依頼人ら被害者に対し、見舞金を支払う保護基金の創設が検討されている。遺産を着服された男性の親族は強調する。「本当は弁護士会を訴えたいくらいだ。会として弁償する仕組みをつくってもらいたい」

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