(写真・神奈川新聞社)
【時代の正体取材班=田崎 基】南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊が活動を記録した「日報」に、現地での武力衝突について「戦闘」と報告されていた問題で、稲田朋美防衛相は8日の衆院予算委員会で「戦闘行為があったか無かったかは、憲法9条上の問題になるため、『武力衝突』という言葉を使っている」と答弁した。自衛隊のPKO派遣は、PKO5原則に則していることで合憲であるというのが政府の統一見解。「戦闘行為」があった場合には5原則の「武力紛争」に当たり、違憲な海外派遣となってしまう。このため稲田防衛相は「戦闘行為」と「武力衝突」を使い分けていると強調した。
また、稲田防衛相は、昨年9月の段階で南スーダン情勢の認識を答弁する際に「日報」や、日報を基に作成された「モーニングレポート」を見ていたかを問われ「見ていない」と答えた。
「日報」を巡る8日の国会質疑を詳報する。
小山展弘衆議院議員(民進党) 平成28年9月30日に国会答弁をする際に、同年7月11日に作成された日報やこれを受けて作成されたモーニングレポートはご覧になられたか。
稲田防衛相 明確に法的意味における戦闘行為、すなわち国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、ものを破壊する行為と定義されているところの戦闘行為は行われていない。そのことは7月の状況、それ以降の南スーダンの状況については詳しく説明を受け、確認をした上で答弁をしたところです。
小山議員 質問は一点です。1次情報である日報やモーニングレポートはご覧になられたのか。
稲田防衛相 さまざまな形で7月以降の情勢、当時の南スーダンの情勢については毎日報告を受けていたが、いまご指摘のモーニングレポート、そして現地の派遣施設隊が作成していた日報そのものを見ていたわけではありません。
小山議員 びっくりする。これだけ大きな、大規模な戦闘が起きていたのに1次情報を確認していないというのは非常に驚き。では何に基づいて、当時答弁していたのか。ものを破壊するとかそうした戦闘行為はなかったというが、迫撃砲が使われた戦闘が報告されている。何に基づいて答弁したのか。
稲田防衛相 施設隊の日報は毎日作る。何のために作るかといえば、(上級部隊である)中央即応集団司令部に報告し、この中央即応集団司令部がモーニングレポートを作る。いまご指摘の国会答弁はいつの時点の状況について質問されたのか、確認したいと思う。
その上で「戦闘行為ではない」と申しましたのは、当時の南スーダンの状況、すなわち国会で議論になっていた南スーダンの状況が、国対国に準する組織、または国対国が国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、または物を破壊する行為と定義されているものではない、ということを答弁したということです。
小山議員 このときの質問は、7月10日を含む一連の銃撃戦について「戦闘行為」があったと考えていいのか、という質問だった。明確に7月のことについて聞いたもの。もう一度答弁お願いします。
稲田防衛相 当時の国会では7月の状況も踏まえて、南スーダンの状況、武力による衝突の状況が「戦闘」に当たるかということが議論になっていた。7月の状況を踏まえ、国際的な武力紛争の一環として行われる「人を殺傷し、またはものを破壊する行為」、これは法律上定義されている法的な用語であるため、混乱を避けるため「戦闘」という言葉は使わないということを繰り返し伝えた、ということです。
小山議員 「7月の情勢を踏まえて」というご答弁だったが、そしたら7月11日の日報にある「迫撃砲を用いた」「戦車を用いた」というのは、人を殺傷しあるいは、ものを破壊する行為ではない、ということになるのでしょうか。
稲田防衛相 何度も申し上げて恐縮ですが、法的意味における「戦闘行為」とは、国対国または国対国準との間の国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、またはものを破壊する行為でありますので、その点、一般的用語における「戦闘行為」と、法的意味における「戦闘行為」が混同されることを避けるために、「戦闘」という言葉を避けてきた、ということでございます。
小山議員 日報やモーニングレポートには「戦闘」という言葉があるが、「戦闘行為」あったということは認めるのか。
稲田防衛相 法的意味において意味があるのは「戦闘行為」かどうかだ。法律に定義がある「戦闘行為」ではないということ。そこの文章でいくら「戦闘」という言葉が一般的用語として使われていても、それは法的な意味の戦闘行為、すなわち「国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し、またはものを破壊する行為」ではない、ということです。
小山議員 非常に苦しい答弁だ。実際に自衛隊が作成した文書の中に「戦闘」という言葉があるではないか。「戦闘」はあったのか。
稲田防衛相 何度も申し上げるが、意味があるのは法律的な意味の「戦闘行為」かどうかだ。「戦闘行為」かどうかということについては「戦闘行為」ではないということ。そこには「戦闘」と書いてあるが、それは一般用語としての「戦闘」であって、法的用語としての「戦闘」ではない、ということでございます。
小山議員 それでは、7月11日の状況についてどういうご認識か。
稲田防衛相 「武力衝突」ということでございます。
小山議員 自衛隊の資料には「戦闘」とある。では「武力衝突」と「戦闘」は日本語として、どのように違いがあるのか。大事なことなんです。法律を守って自衛隊員が命を失っていいのか。事実確認が大事。事実確認に基づいてPKO5原則を守った上で、PKO派遣するのかを判断するべきだ。「戦闘」という言葉を使って報告している。これをどう認識しているのか。
稲田防衛相 なぜ法的意味における「戦闘行為」についてこだわっているかと言えば「国際的な武力紛争の一環として人を殺傷し、またはものを破壊する行為」が仮に行われていたとしたら、それは憲法9条上の問題になりますよね。そうではない、「戦闘行為」ではない、ということになぜ意味があるかといえば、憲法9条上の問題に関わるかどうか、ということです。その意味で「戦闘行為」ではない、ということです。そして、何が問題かといえば、「国際的な武力紛争の一環」として行われるかどうか、その点がないので「戦闘行為」ではない、ということでございます。
委員長 稲田防衛大臣、再度答弁願います。