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(写真提供・日本出版販売/神奈川新聞社)

 

2万冊もの本に囲まれて宿泊できる県内初のブックホテルが箱根町に誕生する。出版取次会社が所有する保養所をリノベーション(大規模改修)し、早ければ2018年春の開業を予定している。稼働率の落ちた保養所の有効活用が主目的だが、出版不況による活字離れを少しでも食い止めようとの狙いもあり、地域住民らが本を購入できる試みも合わせて始める考えだ。

 

ブックホテル「箱根本箱」を開業するのは、書籍や雑誌の流通を担う出版取次大手の日本出版販売(日販、東京都千代田区)と、雑誌出版や宿泊施設の運営を手掛ける自遊人(新潟県南魚沼市)。

 

日販によると、保養所を同町強羅に開設したのは1997年。ただ、当初から稼働率は40%程度と低水準で推移していたという。追い打ちをかけたのは、2015年の箱根山・大涌谷周辺の火山活動活発化。温泉供給がストップし、休館を余儀なくされた。

 

そこで2社は、ブックホテルへのリノベーションを考案。その背景には、出版業界に携わる2社が抱いている活字離れに対する危機感がある。日販の担当者は「読書の時間はゲームやスマートフォンに取って代わった」と言い、「電子書籍の登場で、コミックを購入していた層まで電子書籍に流れた」と続ける。

 

こうした状況から、日販の売り上げは近年漸減。担当者は「書店やコンビニ以外でも書籍や雑誌に触れる機会を増やすため、自然と本に囲まれる空間を創出したかった」と説明する。施設名の「本箱」は「本」と「箱根」を掛け合わせた。

 

ブックホテルは、館内全体を「書斎」と捉え、小説や歴史、デザインなどさまざまなジャンルの本を約2万冊取りそろえ、19の客室全てに本棚も設置。本の購入も可能にすることで、町内最大規模の書店としての機能も持たせ、地元住民や日帰りの観光客も利用できる。一方で、客室でしか読めない本など宿泊特典にも気を配る。

 

また、大浴場には源泉掛け流しの2種類の温泉を引き、露天風呂付きの部屋も用意する。日販の担当者は「スマートフォン全盛期だが、本からでしか得られない情報や知識もある。滞在することで、読書の楽しさに改めて気付いてもらえたら」と期待している。

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