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(写真・神奈川新聞社)

 

食べ残しの多さや異物混入が発覚し、大磯町立中学校の給食が休止してから1カ月がたった。給食問題は新聞、テレビに多く取り上げられ、全国各地から意見が殺到する事態にまで発展したが、弁当持参に切り替わった今は落ち着きを取り戻しつつある。とはいえ、再開のめどは依然立っておらず、町は給食のあり方も含めて模索している。

 

「給食をやめろ」「業者を変えるべきだ」。町内に2校ある町立中学校(生徒計約760人)の給食で食べ残しの多さと異物混入が報じられた今年9月、町教育委員会の電話は仕事が滞るほど鳴り続けた。

 

人口約3万人の町が全国から注目を浴びた事の発端は、食べ残しの割合を示す給食の「残食率」の高さだった。両校のPTAによる調査で1日平均26%、多い日は55%にも上ることが判明。2015年度に環境省が調査した小中学校給食の全国平均残食率6・9%を大きく上回った。

 

14年の町長選で中崎久雄町長が公約に掲げた中学校での完全給食は、昨年1月に始まった。財政面の負担を考慮し、給食業者に調理と配送を委託する「デリバリー方式」を採用した。

 

「みんなで同じものを食べることで給食の楽しさが出てくる」。開始日の同1月12日、中崎町長はそう期待を示していたが、生徒や保護者からの信任は薄らいでいった。

 

町の栄養士が栄養バランスを考え献立をつくり、業者は食中毒防止のために調理後に冷やすなどの安全措置を講じた。だが、生徒からは「味が薄い」「おかずが冷たい」といった声が早くから上がっていた。

 

食べ残しの多さが明るみに出たのとほぼ同時に、髪の毛や虫などの異物が混入していたこともマスコミの報道が先行する形で明るみに出た。「まずい給食」という印象に、異物混入の問題も加わり、町と委託先の都内の給食業者との関係はぎくしゃくしていく。

 

食べ残しと異物混入が報じられたのを受けて、町は異物混入の調査結果を公表したが、その公表の内容は判然としなかった。異物混入は84件で、食材に紛れて発見されるなど明らかな「製造過程での混入」は15件。だが、その15件を除いた異物については、町は混入経路を特定しなかった。

 

後々になってから町の関係者は「工場での混入ではないことを証明してもらうべきだった」と自省する。消極的な姿勢は、異物混入の件数の多さという負のイメージだけが独り歩きしてしまう事態を招いた。

 

一方、この業者が取引先の幼稚園などに対し、町や生徒側に責任転嫁したと受け取られかねない文書を配っていたことも判明する。

 

「給食反対派のリークで騒ぎになった」「(完全給食は)半ば強制的に始まった」などとした文書に、町側は業者の変更も視野に入れた検討を開始。横浜市が実施している中学生向けの弁当事業で業者を変更するといった影響も出始め、業者側は「これ以上、続けられない」と町に給食提供の中止を申し出た。

 

「給食を残すという『罪悪感』から開放され、生徒は穏やかな表情で弁当を食べている」。今月7日、2校の関係者らを集めた懇話会で、今の学校の落ち着いた様子が報告された。

 

ただ、町は“後遺症”に苦しんでいる。新たな業者との交渉は3社とも不調。町の関係者は「全国的に報じられたことで、業者側が大磯町の給食提供を受けるリスクを感じているのではないか」と推測する。

 

18年度予算案に、各学校で製造する「自校方式」などを含めて給食の提供方法の調査・研究費を計上する方針だが、当初から目指した自校方式は施設整備に約5億円かかると見込まれ、ハードルは高い。

 

「学校生活の中でお昼は楽しみの一つであるはず。いいものを与えてあげられるように考えてほしい」。ある保護者は切に願っている。

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