(写真・神奈川新聞)
着物販売・レンタル業者「はれのひ」(横浜市中区)が突然営業を取りやめた問題は、発覚から18日で10日となった。各地の消費生活センターに寄せられた被害は、契約金額ベースで2億円超まで膨らんだ。県警は事案の解明を進めるが、「実態把握には時間がかかる」(幹部)見通しだ。
「卒業式のはかまもセットで頼んだのに」。来年の成人式用に、はれのひと契約した横浜市の女子学生(19)は憤る。総額約30万円のうち、すでに10万円ほどを母親に支払ってもらった。昨年11月には成人式用の前撮りを予定していたが、前日に店から電話で「振り袖は海外にあって手元にない」と言われ延期していたといい、「これからどうしたらいいのか」と不安を隠せない。
神奈川新聞社のまとめによると、県内と東京都八王子市の消費生活センターに寄せられた相談は、17日までに計770件、契約金額で約2億2300万円に上る。県警も同日までに、432件の相談を受理。ある県警幹部は「契約者にサービスを提供する意思がないにもかかわらず、現金を受け取っていた場合、詐欺罪に該当する可能性はある」と指摘するが、「立証は簡単ではない」とも打ち明ける。経営実態や財務状況の解明を進め、事件性の有無を慎重に見極める方針だ。
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はれのひの店舗が入る桜木町駅前の商業ビルの関係者によると、成人式2日前の今月6日には、店のスタッフが「来週も頑張りましょう」と語っていた。ビル関係者は「普通、こういうときは店側から『すみませんが、飛びます』と最低限の連絡があるが、それもなかった」とため息をつく。
問題発覚以降、横浜市中区の店舗や会社の電話はつながらず、登記資料に同社社長の自宅として記載された横浜・みなとみらい21(MM21)地区にある高層マンションの一室は、17日も応答はなかった。
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最多となる364件の相談が寄せられている横浜市は、神奈川県弁護士会と法律相談の窓口を18日から開設するが、被害者への補償は見通せない。はれのひは2016年9月期時点で約6億1千万円の負債を抱え、同期末で約3億2千万円の債務超過に陥っていた。消費者問題に詳しい複数の弁護士は「はれのひからの回収は、事実上困難」との認識を示す。
最大9万人のツアー客らが、料金が返金されないなどの被害を受けた「てるみくらぶ」(東京、破産手続き中)の破綻では、日本旅行業協会がツアー料金などを弁済する「弁済業務保証金制度」に基づき、料金の一部を返金。一方で、着物のレンタルや販売では「業界として弁済する仕組みはない」(複数の関係者)という。
同弁護士会消費者問題対策委員会の小野仁司弁護士は「被害を防ぐには一定の参入規制や保証金を積んでもらうような規制が必要だが、業者からすると自由な商売ができなくなる。難しい問題だが、あるべき規制を議論すべきではないか」と話している。