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マレーシア船籍のヨットから発見した覚醒剤約600キロ=2016年6月、沖縄地区税関

 

元暴力団組員の男ら5人から構成される覚醒剤密輸組織がこのほど摘発された。5人は2016年から17年にかけて複数回にわたり、台湾から沖縄へと500グラム以上、末端価格にして3500万円以上の覚醒剤を密輸していた。

 

沖縄県内では昨年国内最大の約600キロ密輸事件を筆頭に、密輸事件の摘発が相次いでいる。背景には沖縄と海外を結ぶクルーズ船や航空便の増加がある。密輸組織などは盛んになった人と物の往来を「隠れみの」に薬物取引を活発化させているとの見方が広がっている。

 

台湾経由が多発

 

県警暴力団対策課のまとめによると、覚醒剤を県内に密輸しようとして摘発された人数が2015年の0人から16年は14人に増加した。違法薬物全体の密輸摘発人数も7人から24人に増え、そのうち外国人が18人で15人が台湾籍だった。

 

今年上半期時点では覚醒剤事犯の摘発人員が50人と前年同期と比べて15人増。薬物の密輸総摘発人員は5人で前年同期の17人を12件下回ったが、「危険ドラッグ取り締まりの強化で薬物常用者が大麻や覚醒剤に回帰している」(捜査幹部)との見方もあり、県警などの関係取締機関は国境県である沖縄での水際対策強化に努めている。

 

取締官の増員必至

 

今回、摘発された組織は元暴力団組員である男A(38)が犯行を主導する形で組織的に行われていた。男B(43)が台湾で覚醒剤を入手し、航空便で沖縄へと密輸する運搬役を担い、男C(37)が密輸された覚醒剤を小分けにして保管。県警などは男D(36)が県内外で覚醒剤を密売していた可能性もあるとみて、販売先や台湾での入手ルートなど事件の全容解明を急いでいる。

 

2016年の県への入域観光客数は861万人でうち外国人客は200万人を超える過去最高だった。今年も好調に推移しており、記録を更新する見込みだ。捜査幹部はこうした状況を念頭に「手口はどんどん巧妙化していくだろう。今回の摘発は氷山の一角かもしれない」と懸念する。別の捜査関係者は「(外国からの)入域者が増えていく中、関係取締機関の人員拡充は不可欠。違法薬物の入り口を遮断しないと、県内を取り巻く薬物汚染の状況は改善しない」と指摘した。(当間詩朗)

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