米軍北部訓練場のヘリ発着場に続く道路で、三宅俊司弁護士を留め置く警察官ら=2016年11月3日、東村高江(三宅弁護士提供)
米軍北部訓練場ヘリコプター発着場(ヘリパッド)建設を巡り、2016年11月、反対住民を支援する弁護士が東村高江の抗議現場近くで警察官に違法に約2時間通行を制止され精神的苦痛を受けたとして、沖縄県に50万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、那覇地裁(森鍵一裁判長)であった。森鍵裁判長は県警の制止行為やビデオ撮影について「いずれも原告の自由を制約するもので違法と評価される」と判断し、県に慰謝料30万円の支払いを命じた。
訴えていたのは元県弁護士会長の三宅俊司弁護士だが、当時現場では弁護士とは告げていなかった。
県側は「判決文を精査して控訴するかどうか検討することになる」とコメントするにとどめた。
判決は、抗議参加者の車両の一定数は工事車両の走行を妨害することなく道路の端に寄せて駐車するなど「犯罪行為に及ばない参加者もまた相当数いた」と指摘。「抗議参加者であることをもって犯罪行為に及ぶ具体的蓋然性(がいぜんせい)があると判断することは合理性を欠く」とした。
県側は犯罪がまさに行われようとすることが認められたため、警察官職務執行法5条に基づき制止したと主張したが、当時の三宅弁護士の言動などから犯罪行為に及ぶ可能性がないことは客観的に判断できると認定。「(制止行為は)5条の要件を満たさない」と断じた。制止行為は任意だったとする県側の主張も退けた。
警察官によるビデオ撮影についても「犯罪行為に及ぶ蓋然性はなく必要性も相当性も肯定できない」と批判し違法と認定した。
判決によると、打ち合わせのため抗議現場に向かった三宅弁護士は県警指揮下の警察官に止められ、停止の根拠を求めたが、回答はなかった。意思に反して2時間以上道路に留め置かれた上、約1時間以上にわたって承諾なくビデオ撮影された。
三宅弁護士は「全面勝訴。県警の違法行為は政府の政策を実現するためであることは明らかだ。判決は政府の不当性を表している。裁判所は市民の自由を前提とした職務を要求している」と指摘した。