琉球大農学部の外山博英教授(応用微生物学)らの研究グループは30日までに、酒造や食品の発酵に使われる世界中の44種の菌の全遺伝情報を解析し比較した結果、琉球泡盛の製造に使われる「黒麹(こうじ)菌」が沖縄由来である可能性が高いことを明らかにした。黒麹菌は由来が不明で、海外から持ち込まれた可能性も指摘されてきたが、遺伝情報の解析から沖縄由来の可能性が高まったことで、泡盛の歴史の明確化や黒麹菌を用いた「琉球泡盛文化圏」の世界無形文化遺産登録へ弾みになりそうだ。
研究は外山教授とバイオ研究のバイオジェット(うるま市、塚原正俊代表)、独立行政法人酒類総合研究所(広島県)の山田修部門長らのチームが、2014年から共同で行ってきた。
泡盛製造に使われる黒麹菌(学名アスペルギルス・リュウチュウエンシス)は、多数の菌株で黒麹菌群を形成している。
研究では酒造りに使われる黒麹菌に近い性質を持つとされた菌株を世界から集め、全遺伝情報を比較し菌のルーツとの関係を調べた。その結果、黒麹菌群に属する菌は沖縄由来のものしか見つからなかった。黒麹菌群はカビ毒を生まないことも再確認された。
同じ黒糸状菌とされる他のグループの菌は世界中で確認されている。従来、中国で酒造りに使われ黒麹菌とみられてきた菌は「アスペルギルス・ニガー」という別種の黒カビだった。
遺伝情報を基に黒麹菌の種が分かれていった年代を推定したところ、およそ500年前から種の分化が加速していることが判明した。菌は酒造りのように人が世話して急速に繁殖する環境下で種の分化が早まる特徴がある。
遺伝情報から判明した500年前以降の分化の加速は、泡盛製造が始まったとされる600年ほど前とも重なり「泡盛酒造所を含む沖縄に源流がある微生物である可能生が高い」とした。(知念征尚)