カミングアウト前は暗い服ばかり着ていた大学時代の私(一部画像を修正しています) 画像を見る

 

「自分ゲイなんだ」。22歳の頃、真っ暗な自宅で隣にいる友人に勇気を振り絞って伝えました。

 

男性を好きだと気付いても中学高校時代はゲイだとばれないように「女性を好きなふり」をして生きてきたので、実はまさか人に言うなんて思ってもみませんでした。高校卒業後は実家を離れ、北海道大学に進学しましたが、新しい生活が始まった大学でも「ふり」は続いていたのでした。

 

そんな私がカミングアウトすることになったきっかけは、初めて付き合った男性に振られたことでした。生まれて初めて人と付き合えて本当にうれしかったのですが、2週間くらいで振られてしまいました。しかし振られたこと自体がショックだったというより、その彼と別れ話をしていた時、お付き合いの中で相手に少し迷惑をかけたと気付いたのに「ごめん」と言えなかった自分にショックを受けました。

 

そしてふと気付いたのは、自分が人からよく見られたいと思っていることでした。振り返れば、私は典型的な「良い子」。反抗期もほとんどなく、先生や大人の言うことを素直に聞き、国公立大学に進学するくらい勉強のできる子でしたが、一方で、周りの期待を裏切りたくないという殻ができてしまったのかもしれません。

 

勉強ができても、こんな自分じゃ人として絶対だめだと思い、今まで自分の中で必死に隠していたゲイであることを人に言えたら、もっと素直な自分を生きられるのではないかとカミングアウトを決断しました。

 

そして一番信頼できる大学の友人I君にカミングアウトしようと、ご飯でも食べないかと家に誘ったのですが、いざ言おうとすると怖くて全く言えませんでした。夕方6時くらいに家に来てもらっても、ただただ時間だけが過ぎてゆき、朝の4時になって、寝ようと横になり部屋の電気を消したところで、ようやく絞り出すような声で言えたのでした。

 

I君は驚いていましたが、受け入れてくれて「これからどうしたいの?」と聞いてくれました。周りにも伝えたいということを説明したところ、協力してくれ、共通の友人にも言うようになりました。

 

カミングアウトは終わりではなく始まり、と言われます。私自身にとっても、ゲイと知った相手とゲイの私との間で新しい人間関係が始まりました。これまで女性を好きなふりをしていた恋愛話も素直にできるようになり、何より、こちらが心を開いて話すと、相手もより心を開いていろいろな話ができるようになりました。10時間もかかったカミングアウトでしたが、そこから私の新しい人生がスタートしたのでした。

 

(2019年2月5日 琉球新報掲載)

 

たけうち・きよふみ 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。

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