首里城公園の有料区域で琉球王国時代の伝統菓子が食べられると聞きました。子どもと行きたいので詳しく調べてくれませんか?
(沖縄2年目・ひろ姉さん)
「えっ!? そんなおいしいものが食べられる施設があるの?」と喜ぶガチマイ調査員。さっそく追いかけてみます!
まずは首里城公園によく行っていそうな方に聞き込み開始。快く取材に応じてくださったのは、モデルでヨガ講師の山口恵梨子さん。
「昔、首里城祭の王妃に応募したことがあるぐらい、琉球の歴史に興味があって。選考は残念ながら落ちましたが、沖縄のことはもっと知りたいので、たまに首里城公園に行っています」と笑顔。「伝統菓子が食べられる区域は、私も行ったことがあります。おいしいお菓子と美しい景色が堪能できますよ」と続けます。ほほー、お菓子だけじゃなく、景色もすてきなんですね。楽しみ!
王子の控所で提供
では、実際に首里城公園に入ってみましょう。張り切って開園直後の時間を狙い首里城公園に到着すると、すでに観光客がいっぱい。「菓子」というキーワードを探しながら各案内板を見て進むと…すぐ発見!
「鎖之間(さすのま)」というこちらの施設は、琉球王国時代に王子などの控所だった場所。諸役の者たちも招いて懇談していたそうですが、現在は、琉球王国時代の伝統菓子4種とさんぴん茶を味わうことができる体験サービス(有料)を提供しているとのこと。
無事にお目当ての場所を見つけた調査員。大きな窓から見渡せる国名勝の清々しい琉球庭園と伝統菓子を楽しみ、鎖之間を後にしました。
「これにて調査終了?」と暗雲がよぎった調査員ですが、せっかくなので、もう少し取材を進めます。
お菓子は当時の貴重品
調査員が次に向かったのは、首里城公園管理センター。首里城公園を管理・運営する「一般財団法人 沖縄美ら島財団」総合研究センター琉球文化財研究室の勝連晶子さんと、解説員の蔵盛美香子さんが出迎えてくれました。
「琉球王国時代、お菓子は接待や祭祀や儀礼、贈答品など特別な時に用いられていました。当時、首里城で作られていたお菓子は約160種類といわれていますが、沖縄戦で資料が失われ、レシピが資料として残っているものはまだ見たことがありません。ただ琉球王国全体でみると、伊是名島の玉御殿の公式の清明祭で用いられた餅やまんじゅうのレシピが残っています」と文献を見せてくれます。そして「首里から来た料理人が伊是名島の料理人に伝えたレシピが元になっているかもしれませんね」と丁寧に教えてくれました。
蔵盛さんは「鎖之間で提供されている伝統菓子は、歴史資料にみられるお菓子のなかから『花ぼうる、くんぺん、ちいるんこう、ちんすこう』の4種類を用意しています。常連さんもいらっしゃいますし、英語対応も可能です」と案内してくれました。ちなみに、鎖之間が比較的空いているのはお昼どきだそうです!
最後にもう1カ所。5代前の先祖・新垣親雲上淑が、琉球王国時代に王府の包丁役(料理方)を拝命されていた「新垣カミ菓子店」。当時の菓子の味を知る貴重な店で、現在ちんすこうや花ぼうるなどを販売。「『昔からの味は絶対に変えてはいけない』という先代の言葉を守ってきました。今でも心を込めて丁寧に手作りしています」(スタッフ・伊波元丸さん)。
今回の調査は、まさに「お菓子」で巡る琉球王国の取材旅。これにて無事終了です!
<取材協力>
◆内閣府国営沖縄記念公園事務所
◆新垣カミ菓子店 (マップはこちら)
TEL 098(886)3081
(2019年6月6日 週刊レキオ掲載)