200を超える政府機関が加盟する世界最大の自然保護ネットワーク「国際自然保護連合(IUCN)」は10日、南西諸島のジュゴンを「近絶滅種」とする評価を公表した。IUCNが南西諸島のジュゴンの生息状況を評価するのは初めて。IUCNは評価で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を「懸念される主要な場所の一つは米海兵隊の飛行場を大浦湾に移転する計画だ」「海藻藻場の喪失とダメージはジュゴンの生息回復に深刻な障害となる可能性がある」と指摘。工事の影響を否定する政府見解と異なる意見を示した。
近絶滅種の位置付けは最も絶滅の危機にひんしている状況を示す。環境省は2007年にジュゴンを同じく絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧1A類」に分類したが、国際的な機関も同様の状況を追認した形。IUCNはジュゴンの他に、国内ではイトウやオキナワスミレなど12の動植物を「近絶滅種」に分類している。
今年3月に今帰仁村の漁港でジュゴンの死がいが確認されたことから、ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹氏らが南西諸島のジュゴンの生息状況を評価するよう、IUCNに働き掛けていた。
今回の評価でIUCNは、南西諸島のジュゴンは1970年代には30頭程度が生息していたにもかかわらず、現在は10頭以下に減っていると推測した。
辺野古新基地建設が始まって以降、工事周辺海域で確認されていたジュゴン2頭が行方不明となっている。防衛省は工事の影響を否定している。
吉川氏は「IUCNは2000年以降、勧告や決議を通して日本政府にジュゴン保護を求めてきた。しかしジュゴンは保護されるどころか、沖縄本島の海で姿も食跡も確認できていない状況に陥っている」と危機感を示した。その上で「以前は辺野古の海にジュゴンがいた。政府はせめて数年くらいは辺野古の工事を止め、ジュゴンが海域に戻らないか確認すべきだ」と指摘した。