沖縄のバスケットボール界で“プロの裏方”と称される縁の下の力持ちがいる。Bリーグ琉球ゴールデンキングスのホーム戦のラジオ解説を務める金城寿さん(47)=北谷町=だ。小学校教員を務める傍ら、旧bjリーグで公式審判として笛を吹いた経歴があり、分かりやすい戦術解説が新たなファン層の拡大につながっている。「バスケを通して出会い、自分を支えてくれている人たちに恩返しがしたい」。感謝の気持ちが、多彩な活動の原動力だ。
那覇市出身。小中高とバスケを続け、社会人になって以降もクラブチームで腕を磨き、母校の古蔵中などで監督も経験した。
転機は琉球ゴールデンキングスがbjリーグに参入した2007年。宜野湾市で行われた開幕戦を「指導の参考になれば」と軽い気持ちで観戦した。すると試合中、会場のある人物に目を奪われている自分に気付いた。それは選手ではなく、審判だった。
機敏にコートを駆け、選手の抗議に毅然(きぜん)と対応する。「公式審判は立ち居振る舞い、ジェスチャーがキレキレでかっこいい。自分にもできないか」。すぐに行動に移し、平日は教員をしながら、週末は東京での研修に通って4年間トレーニングを続け、12年に公式審判の試験に合格した。当時40歳。「やっと試合で吹ける。表現のしようがないくらいうれしかった」と振り返る。その後はキングスのホーム戦を担当し、1シーズン10~15試合を裁いた。
16年のBリーグ創設以降はライセンスの関係で審判はできなくなったが、ラジオ沖縄から解説者の依頼が舞い込む。番組はキングスのホーム戦をライブ中継する「キングスコートサイドライブ」。戦術やルールに対する深い知識を買われての依頼だった。「一度やって、リスナーが納得しなければやめればいい」と引き受けた。選手を最も近い場所で見てきた審判ならではの視点、教壇で培った話術で人気を博し、来シーズンでリーグ創設5年目に入る今もマイクの前に立つ。
さらに18年からは、15歳以下を育てるキングスアカデミーやユースチーム「キングスU15」に指導者として携わるようになった。選手、指導者、審判、解説者として培ってきたさまざまな視点や知識で日々育成に当たっている。
現在は嘉手納小に勤めながら、新たなことに挑み続ける金城さん。今後は「海外でも審判やコーチをやって、その知識、経験を沖縄に持ち帰りたい」と旺盛なチャレンジ精神は衰えを知らない。「活動を通し、夢をかなえることや社会貢献の大切さを子どもたちに伝えたい」とにこっと笑った。
(長嶺真輝)