竹富町の波照間島で、島で取れた魚や野菜を卸せる場所をつくり島の経済を活性化しようと、7月末に小さな市場が立ち上がった。「はてるマーケット」と名付けられた店を開業したのは居酒屋あがんの店主で、島出身の登野盛龍さん(35)。きっかけは島にも押し寄せたコロナ禍だった。登野盛さんは「昔ながらの物々交換や助け合いの精神に触れ、島のために何かできることはないかと考えた」と語り、島独自の経済循環に向けた取り組みへと踏み出した。
波照間島は今年4月上旬から、新型コロナウイルス感染拡大によって観光客が大幅減となった。船便の減便で物流も滞り、特産品を島外に出荷することも厳しい状況が続いていた。島の環境が激変する中、登野盛さんは、外食ができない人のために配達で食事を届けるなど試行錯誤を繰り返していたという。
緊急事態宣言の期間中、趣味の素潜りで取った魚を近隣の住民に分けると、代わりに大量の野菜をもらうことがあった。その際、住民から「スタッフを抱えるあなたのところに野菜を届けられてうれしいよ」と声を掛けられたという。
住民同士の助け合いを基盤に、島の人が気軽に商品を卸して買い物ができる場所をつくれないか―。そこで取り組んだのが「はてるマーケット」だった。
元々あった民宿を改装して店舗を構えた。住民が持ってきた野菜を仕入れて100円~300円で提供するほか、魚も100グラム100円ほどで売り出す。島中から集まった新鮮な野菜や魚が並び、安価で提供される商品を求めて人々が集う。島の人とものが行き交う場所として認知が広がっている。
「安心、安全、安価な商品を提供でき、島の人が気軽に集まれる場所にしていきたい」と意気込む登野盛さん。将来的には店舗から波照間島の特産品をオンラインで売り出し、電子マネー化にも取り組む考えだ。
(池田哲平)