創業102年の乳業メーカー宮平乳業(糸満市、宮平隆一社長)がコスメ事業に参入し、新たな可能性を模索している。昨年12月に第1弾として牛乳の成分を配合したハンドクリーム「Chi―Chi(ちーちー)」の販売を開始。スキンケアブランドの「ちーちー」シリーズとして、県外進出も視野に入れた商品展開を仕掛けていく。
乳牛は暑さに弱いため夏場になると牛乳の生産量が減少する。逆に生産量が多い冬場は市場の需要が減り余剰が出るなど、安定的な乳価の確保が酪農家やメーカーの課題となっている。
宮平乳業は2019年頃から、余剰乳を活用した商品開発に着目してきた。同社営業の宮城陽介氏は「創業100周年という節目も合致した。食べ物でも飲み物でもない、コスメ事業という新たな挑戦が始まった」と、新分野開拓の経緯を説明する。
ハンドクリームの製造は、化粧品メーカーのポイントピュール(久米島町)に依頼した。保湿力に優れ、しみやしわ、くすみの改善が期待される乳清(ホエイ)を余剰乳から抽出し、久米島海洋深層水や月桃など県産素材の美容成分を配合。高温多湿の沖縄で利用しやすいように、べたつきがなく、さらっとした使い心地を追求した。
宮城氏は「まずは県民に愛されるブランドにしたい」と語り、商品開発を通して社の認知度向上や牛乳の消費底上げにつなげようと意気込む。
香りはシークヮーサーやハーブのイランイランなどをベースにした5種類。30グラムで税込み1320円。イオンモール沖縄ライカムやサンエー那覇メインプレイスなど30店舗以上で販売し、年間1万5千本の販売を目指す。
宮平乳業の池良一統括本部長は「創業当初から『ちーちーやー』(方言で牛乳屋)で親しまれてきた。この先100年も、乳を中心とした新たな商品開発にチャレンジし、沖縄の酪農を取り巻く環境を良くしていきたい」と語った。
(当銘千絵)