小さなラベルに広がる無限の表現
県内でアート活動をする作家たちが、ビール瓶のラベルをキャンバスにそれぞれの表現をした個展「CRAFT BEER LABEL ART 1st. EXHIBISION(クラフト・ビア・ラベル・アート・ファースト・エキシビジョン)」が21日(月)から開催される。作家も飲食店も、思うように活動ができないコロナ禍の中、安心して楽しめる企画を模索した。宜野湾市新城のBEEAR(ビーアー)で7月4日(日)まで
イラスト、グラフィティー、紙漉(す)きなどさまざまなジャンルで活動する県内の5人の作家がラベルをデザインしたクラフトビールが展示・販売されている。会場となっているのは宜野湾市新城にあるクラフトビール専門店、BEEAR(ビーアー)だ。アートとビールのコラボレーションに情熱を注いだ関係者たちに話を聞いた。
「クラフトビールのラベルはおしゃれでデザインに凝ってるんです。そうじゃなかったらクラフトビールじゃない(笑)」
ラベルアートの作品を前にそう冗談を飛ばすのは、ビーアーのオーナー、池城安司さん。素材や行程にこだわり少量生産されるクラフトビールを国内外から仕入れ、提供・販売している。池城さんの話す通り、ビーアーで販売される缶や瓶のラベルはどれもユニークで、見ているだけでも楽しい。
困難乗り越え開催
今回の企画が始動したのは約1年前。アートとクラフトビールのコラボで「沖縄から話題を発信していきたい」と考えていた池城さんが店の常連客である許田盛哉さんに声をかけたことが始まりだった。
ギャラリー、PIN-UP(ピンナップ)のオーナーである許田さんは、他には無い商品が作れるという企画に協力を快諾。5人の作家に参加を依頼する。ちなみにこの時は、アートとセットになるクラフトビールの内容は未確定。 作品に面白い「化学反応」が起こると期待し、あえて中身の詳細は伝えず制作してもらった。
しかし、コロナ禍におけるイベント企画は難航。これに加えて、昨年9月、宜野湾市真栄原のピンナップが原因不明の火災に遭ってしまう。
一時は企画の存続も危ぶまれたが、許田さんがギャラリー開業以来持ち続けてきた「地域のアートシーンを盛り上げたい」という意思が折れることはなかった。建物を失ってもアートに関する活動を止めなかった許田さんと池城さんや参加作家らが、力を合わせて開催にこぎつけたのがこの展示なのである。
自由な感性がラベルに
ラベルアートが施された瓶の中味もこだわりの一品だ。手がけたのは沖縄市比屋根にある醸造所、Cliff Beer(クリフビール)。代表の宮城クリフさんは画家としても活動している。
企画に合わせ造られたのはIPAというタイプのクラフトビール。今年2月の仕込みには、池城さんと許田さん、参加作家も立ち会った。 完成したIPAは「大麦の香りを全面に感じられるのが特徴です」と宮城さんは話す。
今回の出展作家、 STUDIO SELFISH (スタジオ・セルフィッシュ)さんは、イラスト制作やTシャツのプリントをして活動する。ラベルで表現したのは「浮遊感のあるほろ酔いと、アメリカの文化の中にあるビール」であるという。
スプレーなどを使ったグラフィティーというスタイルで表現をしているU2SM(ウツセミ)さん。今回は自身の仕事道具である画材と「家族だんらん」を描いたデザインで異なる酔い加減を表現した。
色っぽい女性ダンサーの絵と、月桃やクロトンなど沖縄の植物を使った和紙のラベルを制作したのは青柳磨央さん。「頑張った後、コチコチの心を癒やしてくれる」ような柔らかい表現が魅力だ。
「酔った時に見る月」のイラストと、沖縄の方言をちりばめたデザインのラベルを出展したのはイチグスクモードさん。「自分のデザインが商品になり最高です。ラベルを見てるだけで酔えます」と喜びを語った。
イラストや壁画を手がけているanmin(あんみん)さんは、かわいらしいキャラクターを描いた2デザインで参加。「手に取った方の生活を明るくする事ができたらいいな」と作品に込めた願いを教えてくれた。
会場では、池城さんと許田さんがデザインしたラベルも展示中。決して大きくないサイズのラベルだが、その中には作家たちのカラフルな世界と思いが広がっている。
(津波 典泰)
〈イベント情報〉
「CRAFT BEER LABEL ART 1st. EXHIBISION」
会 場:BEEAR(宜野湾市新城 1-36-2)
期 間:21日(月)~7月4日(日)
平 日:11時~14時、17時~20時
土日祝:11時~20時 入場無料・ラベルアート作品のボトルは会場で購入可能(1本1000円税込み、数量限定)
※今月4日からの開催を予定していましたが、緊急事態宣言の発令に伴い、現在展示を一時中断しています。21日(月)から再開予定です
※ご来場の際は、マスク着用、検温、手指の消毒をお願いします
(2021年6月17日付 週刊レキオ掲載)