受講者2万人超え!「認知症を防ぐ」女性社長に与えられた使命

投稿日: 2017年11月19日 11:00 JST

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「男性の参加者が多いでしょう? iPadを巧みに操れることは、男性の自尊心をくすぐるみたいですね。男性やご夫婦での参加が多いのが、脳若の特徴のひとつです」

 

そう語るのは、「脳を若返らせる『みつおか式脳若トレーニング』」の開発者で、株式会社サムライト社長の光岡眞里さん(52)。サービス付き高齢者向け住宅『そんぽの家・姪浜』(福岡市)の集会場。毎週水曜日は「脳を若返らせる『みつおか式脳若トレーニング』」の日。入居者は午前10時半から1時間、参加費300円で利用できる。

 

11月1日の参加者は11人。脳若コミュニケーター(講師)の指導の下、それぞれ手にしたiPadで「反射年齢」トレーニングに興じていた。画面中央に表示されたイラストの手で、落ちてくる棒をつかむゲームだが、落とさずキャッチする反応の速さで、反射年齢が出る。

 

会場内は和気あいあい。みんな楽しそうだ。光岡さんが独自に開発したみつおか式脳若トレーニング(以下・脳若)のプログラムは800種類以上。その日、どんなメニューで行うかは、参加者の顔ぶれを見て、講師が現場で、興味を引きそうなものを判断し、提供していく。

 

姪浜では、「反射年齢」のほか、講座開始時に覚えたキーワードを、終了時にみんなで復唱する「遅延記憶」、6分割画面に写真表示された卵やメガネなど、6つの物を記憶して、iPad上の黒板に指で文字を書いて答える「短期記憶」、体と脳を鍛える「BB体操」など、6種類のトレーニングが行われていた。

 

専用のアプリと教材がインストールされた端末を個人で購入することもできるが、光岡さんは、開発当初から、姪浜のような高齢者住宅や介護施設、自治体などが主催する認知症予防講座での導入に力を入れてきた。

 

「なぜなら、脳若は単なる脳トレゲームではないからです。大切なのは、ゲームではなく、iPadを通じたコミュニケーションなんですね。一人の部屋から、集会場に出てきて、みんなで会話したり、助け合いながらトレーニングをする。それが脳を若く保ついちばんの秘訣なんです」(光岡さん・以下同)

 

光岡さんは元専業主婦。パソコンを覚えたのは、子育てが一段落して派遣会社に登録をした’01年からだ。

 

「当時は、起業なんて、まったく考えてもいませんでした。大学卒業後、田舎の堅実な会社に就職し、単純な経理の仕事だけして、2年弱で寿退社。それからずっと専業主婦。その経歴で、起業なんてありえないと思うのが普通でしょ」

 

派遣の仕事で、パソコンの使い方を覚えた光岡さんは、近くの公民館でパソコン教室を始めた。’03年のことである。そのとき集まった7人が、全員シニアだったため、最初からシニア向けの教室として定着。現在の脳若トレーニングの原点になっている。

 

「生徒さんたちと話すうちに、パソコンの操作技術はもちろんだけど、講師や仲間とまた会いたくなるような、楽しい教室を目指そうと考えるようになりました。『覚えたことを忘れてもいいんです。みんなでワイワイやりましょう』と、話していました」

 

テキストは、当時から、オリジナルの手作りだった。シニア生徒の反応を見ながら、わかりやすく、楽しめることを重視したテキスト作りの経験は、後の脳若の独自プログラムの基礎となっている。

 

’05年ごろから、光岡さんは、ただパソコンを使うだけではなく、元気な高齢者を増やす「介護予防」にならないかと考えるようになる。’06年、光岡さんは、女性起業家塾で経営を一から学び、’09年12月、資本金300万円で株式会社サムライトを立ち上げた。iPadの日本販売開始はその翌年の5月。

 

「これだ! と思いました。高齢者にはマウスの操作って、難しいんです。でも、iPadなら指で簡単に操作できる。高齢者も使いやすいと、飛びつきました(笑)」

 

こうしてiPadを使った認知症予防ツール「脳若」が誕生する。最近では、パソコン教室や介護事業者、地域コミュニティなどでも脳若講座を開くところが増え、受講者は、延べ2万人を超える勢いだ。なぜ、光岡さんはここまで頑張れるのだろう?

 

「なんとなくですが、77歳までは社会のなかで働いていたいという思いがあります。母は74歳まで、現役で保険の外交をしていましたから」

 

50代で運転免許を取り、外を回って、人と会い、家にいたことなどなかった母は、常に光岡さんの人生のお手本だった。

 

「母は90代になるまで元気で、新しいことにチャレンジするバイタリティのある人でした。’14年に、倒れたのですが、その前日までメールをしていましたからね」

 

脳梗塞だった。約1年半の闘病の末、昨年2月17日、92歳で亡くなった。入院して、まだ、意識があったときに、母が書いたメモ《大変だとおもいます。ありがとう》の写真を、光岡さんは携帯に大切に保存している。倒れた直後から、話すことも難しくなっていた母の直筆は、乱れてはいたが、最後まで、娘にメッセージを伝えようとする強い意志のこもった文字だった。

 

「まだ、元気なころ、母は『命をいただいて長生きするのは、それなりの使命があるから。あなたも、使命感を持って、世の中の役に立って、生きなさい。頑張りなさい』と、言っていましたね……」

 

光岡さんは、母から受け継いだ使命感に支えられ、今日も全国を駆け回る。

 

「脳若を通じて出会った高齢者たちの手で、地域のコミュニケーション作りが進んでいます。お互いに助け合い、元気を維持する輪が広がっているんです。高齢者が自主的に、しなやかに生きる。そのためのお手伝いをするのが脳若です」

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