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「柔道を続けていなかったら、どんなことにも自信が持てない、すごく弱い人間になっていたと思います。今はただただ強くなりたくて、ひたすら練習に打ち込んでいます」

 

そう語るのは、9月7日に開幕するリオデジャネイロ・パラリンピック視覚障害者柔道女子57kg級に出場する廣瀬順子選手(25)。練習を終えたばかりの彼女には、光る汗がしたたっている。

 

8月末、柔道の聖地・講道館(東京)で行われた代表選手の直前合宿。リオ五輪の柔道の大活躍もあり、参加した選手たちにも力が入っていた。廣瀬選手もそのひとり。練習相手の男子大学生に何度も畳にたたきつけられるが、すぐに立ち上がり、向かっていく。

 

そんな彼女の視力は両目とも0.08。18歳のときに成人スティル病(膠原病の一種)を発症し入院。完治はしたが、合併症で2.0あった視野の大部分を失った。しかし、練習では男子学生を背負い投げや足技で打ち負かす場面も。

 

「相手の足の動きは見えません。でも組んだときの手の感覚から予想して技を出します。今いちばん感じているのは、柔道がすごく楽しいということ。楽しいと思いながら練習すれば、絶対強くなると信じているし……。それに今は、1人じゃないし!」

 

厳しい練習を終え、ようやく白い歯をのぞかせる彼女。その傍らには、夫でコーチの悠さん(37)がいる。小学2年生から始めた柔道だったが、高校時代に緑内障による視力低下をきっかけに視覚障害者柔道に転向した悠さんも、リオ・パラリンピックの視覚障害者柔道男子90kg級に出場する。同じ競技で夫婦そろってパラリンピックの舞台に立つのは日本初だ。

 

廣瀬夫妻は、順子さんが14年の仁川アジアパラリンピックで準優勝、悠さんが北京パラリンピックで5位という実績がある。柔道を通じて出会った2人は、昨年12月に結婚し、現在は愛媛県松山市に暮らしている。練習は常に二人三脚。

 

「僕は人に厳しく、自分には甘いタイプ。苦手にしていた寝技の練習も、男子でも弱音を吐くくらい厳しく指導していますが、彼女はしっかりついてくる。そんな姿に、こちらが励まされることも多い、北京では1人でしたが、2人で行くパラリンピックは心強いし、楽しみです」(悠さん)

 

「リオではがむしゃらに頑張りたい。目標は、夫婦で金メダル!これまで支えてくれた職場の人や友人、家族に恩返ししたいです」(順子さん)

 

そんな新婚9カ月の廣瀬夫妻が、リオデジャネイロ・パラリンピックでWの金メダル獲得に挑む!

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