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3月29日16時、貴乃花部屋に1台の車が止まった。姿を見せたのは、花田景子さん(53)。ふだんは部屋の正面口に駐車しているが、この日は部屋の裏側にひっそりと駐車する。そして表に集まっていた報道陣から隠れるように、足早に勝手口から部屋のなかへと入っていった。その表情にはサングラス越しでもわかるほど、疲れの色があらわれていた――。

 

この直前、日本相撲協会では理事会が開かれていた。下されたのは、貴乃花親方(45)の2階級降格処分。春場所での無断欠勤と、貴公俊(20)の暴行問題への監督責任を問われての処分だった。

 

すでに1月4日には元横綱・日馬富士(33)の傷害事件で協会への報告を怠ったことが問題視され、「理事」から「役員待遇委員」へ2階級降格。2月の理事候補選で落選したため、さらに「委員」へと1階級降格していた。そして今回の処分で「委員」から最低位の「年寄」に。理事経験者の年寄降格は、過去に例がないことだという。

 

処分前日の3月28日には、臨時年寄総会に出席。親方衆からは「解雇」に相当する契約解除を求める声が。さらには「念書を書かせるべき」との厳しい声も出ていたと報じられている。そんな針のむしろのなか、貴乃花親方はひたすら「申し訳ありません」と謝罪を続けていたという。

 

協会の処分決定後、冒頭のように部屋へと足早に入っていった景子さん。それは満身創痍の状態で帰ってきた夫のもとへ駆けつける、妻の姿だったのだ。この日、部屋での夫婦そろっての話し合いはなかなか終わらなかった。途中スタッフらしき女性が部屋から出てきて、水を買いに走る。いつもなら、女将さんはとっくに自宅へと戻っている時間だ。

 

その後も、話し合いは続いた。4時間後の20時すぎ、ようやく景子さんが出てきた。女性スタッフたちに囲まれながら、裏手にある車のほうへと向かう。あたりはもうすっかり暗くなっている。記者がひと言、こう声をかけた。

 

――女将さん、お疲れさまです。今日は親方とどんなお話をされたのでしょうか?

 

だが景子さんは記者の問いかけに終始、無言。そのまま車に乗り込むと、自宅へと帰っていった――。

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