(写真:アフロ)

《ワールドカップで活躍するために(ケガの)治療を続けてきました。ワールドカップで戦える身体に戻すための努力をしてくれた、日本代表をはじめとするドクター、トレーナー、メディカルスタッフに本当に感謝します》

 

W杯ロシア大会開幕直前、公式ブログにこう記していたのが、今大会2得点1アシストと大活躍した乾貴士(30)。ドクターやスタッフに「感謝」の言葉を述べたのは、壮絶なケガとの闘いを乗り越えられたからだったに違いない。

 

今回、日本代表の快進撃を支えた医療スタッフのなかに、1人の女性ドクターの姿があった。日本スポーツ振興センターが管理・運営する国立スポーツ科学センター所属スポーツドクター土肥美智子さん(52)だ。

 

なでしこジャパンが準優勝した’15年のW杯ではスタッフとしてドーピング対応も務めるなど経験豊富で、田嶋幸三JFA会長(60)の妻でもある2児の母だ。

 

ロシアでは、選手の体調管理やコンディショニング面をケアし、ケガからの回復をサポートした土肥さん。帰国後に選手とともに闘った“熱い1カ月半”を振り返ってもらった――。

 

「私が初めて男子A代表の合宿に帯同したのは、’16年6月のことでした。ですので、今回のW杯で初対面という選手はいませんでしたが、どの選手への接し方も差がないように、全員と『新たに会う』気持ちでW杯に臨んだんです」(土肥さん・以下同)

 

5月に発表された23選手のなかには、故障を抱えて試合に出られない選手が複数いた。とくに左大腿負傷の乾と、右足首負傷の香川真司(29)のケガは深刻だった。土肥さんが開幕前の様子をこう振り返る。

 

「ケガをしている選手に関しては、召集前の段階からずっと、私たち医療スタッフで情報共有していました。各所属のチームドクターから、情報を収集していたんです。そのデータをもとに、開幕に間に合うのかどうかを考えて、フィジカルコーチが決めるトレーニングメニューをスタッフで作り上げていたんです」

 

そのスタッフたちのなかにおいて、ただ1人の女性ドクターである土肥さんが担った重要な役割の1つは、内科的治療に加えて、故障とも闘っている選手たちの悩みに寄り添うことだった。

 

「1日のスケジュールを終えた夜のケアの時間には、選手の本音や人柄が出やすいんです。私はそこで『いま困っていることは何?』と問いかけるように心がけていました」