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3月20日に開幕する「ISU 世界フィギュアスケート選手権大会2019」での“復活”が期待される絶対王者の羽生結弦(24)。昨年に続き、3.11のチャリティオークションにスケート靴を出品。開始直後から値がはね上がり、最終的に約712万円で落札されるなど、変わらぬ人気ぶりを見せつけた。

 

「本当はスケート靴が欲しいんですけど、とても手が出ません。ネットでユヅが愛用しているものと同じペンダントを見つけて、それを購入しようと思ったのですが……」

 

そう首をかしげるのは神奈川県在住の55歳の主婦。

 

「約4万円と高額なのに、どこにもユヅが使っているものと書いてありません。思い切って業者に問い合わせましたが、どうもよくわからない答えだったんです」

 

ユヅの首元でいつも揺れているペンダントはファンの間では超有名アイテム。じつは、このペンダントは、羽生が小学2年生のときからの専属トレーナーで、ソチ・平昌五輪でも彼をサポートしていた菊地晃さん(63)から贈られたものだ。菊地さんに真偽を確認した。

 

「あのペンダントのマークは、私が経営している接骨院のシンボルとして作ったものです。タイの寺院で思い浮かんだデザインに、私が好きな言葉『希望、維持、破壊、慈愛』の頭文字、〈K・I・H・J〉を配しました。ペンダントは仙台市内の石材店に注文しました。それを着用した患者さんの体調がよくなったということもあり、結弦が“僕もつけてみたい”ということでプレゼントしました」

 

ペンダントは、初の金メダルを獲得したソチ五輪で着用していたことで一躍有名に。さらに平昌五輪でも、同じペンダントをつけて、五輪2連覇を成し遂げた。やはり不思議な力があるの?

 

「いやいや、そんなパワーなんかありませんよ。結弦が五輪で2連覇したのは彼の努力。あのペンダントは、おまじないとか、ゲン担ぎでつけているだけだと。つけていると安心できるということで、今でもつけてくれています」

 

菊地さんがそのペンダントを渡したのは知人のみ。もちろん、通信販売をしたこともないという。

 

「でも、結弦が『先生、このペンダントのニセモノが出ているよ』と言ってきて。このとき、はじめてコピーが出回っていることを知ったんです」

 

前出の主婦が買おうとしていたペンダントは、大手ネット通販ショップで、3万7,800円で売られていた品。商品説明には、羽生の名前や写真は見当たらず、印字されている〈K・I・H・J〉の文字は、KIND(本質)、INFINITY(無限)、JOY(歓喜)、HARVEST(収穫)の頭文字だという。

 

“疑惑のペンダント”の発売が始まったのは’14年12月。羽生がしているペンダントが注目されたソチ五輪のあとだ。さらにT社は’15年に商標権と意匠権を登録している。ペンダントを販売している愛知県のT社の女性社長に直接確認をとった。

 

――羽生選手が使っているのと同じペンダントですか?

 

「羽生さんのペンダントと同じかどうかはわかりません。また羽生さんが、うちの商品を買ったかどうかの事実も確認できません。お問い合わせいただいた方にも、そう説明しています」

 

――羽生選手のペンダントとデザインが同じように見えるが?

 

「同じと言われるのはとても心外。私が10年以上前にデザインしたもので、商品化に時間がかかりましたが、わが社のトップ商品です」

 

――販売される以前から羽生選手はペンダントをつけています。彼が買えるはずがありませんが?

 

「……。そりゃ、そうですね、としか言えません。そもそも、羽生選手がしているペンダントを私は確認していないから、弊社の商品と同じかどうか確認できません。まるで、うちがだまして買わせているみたいな、言い方をしないでください!」

 

女性社長は、羽生が愛用しているペンダントだといって売ったことはないというが、発売当時の当人のフェイスブックには《羽生結弦ネックレスを販売開始しました》という書き込みが残されていた。

 

一方、T社の宣伝文句には“羽生結弦”の文字はないが、製作者不明のサイトやSNSで、羽生が着用しているものとして、T社の商品が紹介されている。

 

商法に詳しい「GVA法律事務所」猿渡馨弁護士が語る。

 

「ネット通販では、有名人の名声を無断で利用して、自らの商品をセールスすることも容易です。他人の作品や顧客吸引力を無断で利用したセールス手法は場合によっては、違法なものとなりえます。ネット時代、消費者が自分で情報を収集するなど、きちんと精査して購入することが大事です」

 

最後に菊地さんがこう語る。

 

「コピー商品として、あのペンダントが売られ、それをファンの方が間違って買われていると思うと、とても残念です」

 

〈羽生結弦とおそろいです〉。販売サイトの購入者の感想を書き込めるページには、そんなファンの喜びの声が残されていた――。

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