《日頃から沢山のはげましのメッセージ、お手紙など本当にありがとうございます。現在、治療は順調に進んでいます。普段、体調が良い時は、今までやらなかったぬり絵やパズルをやったり、映画を観たり、泳いでた時は出来なかったことを楽しむ、という生活を送っています》
こう近況を報告するのは、2月に白血病であることを告白した競泳の池江璃花子選手(18)。これまでTwitterで闘病の様子をつづってきた池江選手だったが、3月13日の投稿を最後に更新が停止。治療の過酷さを心配する声が寄せられていた。そんななか、彼女は5月8日に公式ホームページを開設したのだ。冒頭の発言は、そのなかで発表したもの。久しぶりの肉声は、多くのファンを喜ばせた。
本誌は4月23日号で、池江選手が都内の病院に転院していたことを報じた。白血病治療の名医がいることで知られているというが、気になるのは現在の病状。白血病に詳しい江戸川病院腫瘍血液内科副部長の明星智洋医師はこう語る。
「白血病にはさまざまな種類があり、必要な治療法もそれぞれ異なります。年齢や報道されている症状から、池江選手はリンパ性だと予想されます。リンパ性の場合、最初は『寛解導入療法』と呼ばれる強い抗がん剤治療を行います。それによって、『完全寛解』という骨髄機能が正常に近づく状態を目指します。パズルやぬり絵をされているということなので、おそらく今の池江選手は熱もなく平穏に過ごされているのだと思います」
池江選手が白血病を公表してから3カ月。次のステップへ手前の時期かもしれないと明星医師は推測する。
「公表されている情報が少ないのであくまで推測にはなりますが、抗がん剤治療が終わって免疫が回復してきたころかもしれません。つまり『寛解導入療法』を終えて、次の『地固め療法』へと移行する“はざまの時期”にいるのではないでしょうか。この時期は白血球の値次第ですが、無菌室から出て1週間ほど一時退院できる場合もあります。ただ『地固め療法』が開始されると、また無菌室に戻ることになるでしょう」
一時的に体調が上向いたとはいえ、池江にはまだまだつらい治療が待ち受けている。そんな闘病生活を送るうえでは身体だけでなく、メンタルのケアも重要になってくるという。明星先生は続ける。
「抗がん剤を投与している期間がきついのは当然なのですが、それ以外にも無菌室に閉じ込められている状況は非常にストレスがたまるんです。無菌室は基本的に面会謝絶状態。他人と会話もできず、たったひとりです。話し相手がいないと将来への不安や病気による死の恐怖を抱くなど、ネガティブになってしまいがち。患者さんの中にはうつ病を併発してしまう方も珍しくありません。だからこそ、医師や周りの人間がしっかりとメンタルをケアしなければなりません」
そして、制限だらけに思える無菌室で意外な“気晴らし”に挑戦する患者も多いようだ。
「池江選手は映画などで上手に息抜きをしているようですが、部屋でスクワットなどの筋トレを行って気分転換をしようとするアスリートの患者さんもいます。『スクワットなんかできるのか?』と思うかもしれませんが、白血病患者は抗がん剤治療中以外は普通の人と同じなんです。むしろ積極的にしていかないといけません。ベッドの上でずっと安静にしていると、筋力が一気に落ちてしまいますからね。ですから、われわれも患者さんには無菌室で筋トレしてもらうよう勧めているんです」
長くつらい治療を乗り越え、池江選手は再び活躍のときを目指す――。