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今季初戦となるオータム・クラシックの舞台に立った羽生結弦(24)。9月13日に行われた公開練習で、ベールに包まれてきた今シーズンのプログラムがついに明らかとなった。

 

例年だとシーズン開始前の8月にはカナダで公開練習を行い、そこで新プログラムを発表してきた羽生陣営。だが今年は直前になって公開中止が報じられ、プログラム発表を行わないまま新シーズンに突入する“異例の事態”となっていた。

 

それから1カ月。今回発表されたプログラムはショートが「秋によせて」で、フリーが「Origin」。どちらも昨シーズンと同じ曲だったのだ。この決断に、関係者からはどよめきが起きたという。というのも今年3月に行われた世界選手権で、羽生はこの曲でネイサン・チェン(20)に敗北を喫していたからだ。

 

「羽生選手はミスこそあったものの、フリーでは圧巻の演技を披露。300点超えをたたき出していました。にもかかわらず、ネイサンは20点以上も上だったのです。誰もが『抜本的な見直しが必要だ』と考えていました。そうなると通常は曲も含めてプログラムを一新し、より高得点をたたき出しやすい構成に練り直すのがセオリーでしょう。にもかかわらず同じ曲のまま再戦するため、驚きの声が上がっていました」(前出・スポーツジャーナリスト)

 

世界選手権後には「負けは死も同然」と語るなど、悔しさをにじませていた羽生。そんな彼がなぜ、今回の決断に至ったのか。その理由について、フィギュア関係者がこう明かす。

 

「実は、今夏時点で『曲は変えない方針』と聞いていました。羽生選手が『小細工はしたくない。本当の意味でネイサンに勝つことにはならないから。やるなら堂々と徹底的に。この曲のまま真っ向勝負で勝つ』と言っていたそうです。特に羽生選手はフリーの『Origin』に強いこだわりを見せています。この曲はエフゲニー・プルシェンコさん(36)の『ニジンスキーに捧ぐ』をアレンジしたもの。リスペクトする人から受け継いだ曲で負けたままではいられない。そう考えたことも今回の決断に大きく影響したと聞きました」

 

いわば、羽生が意地をみせたのだ。だが、戦略上でも大きなメリットがあるという。前出のスポーツジャーナリストがこう語る。

 

「曲目を変更してしまうと、プログラムをイチから覚えていかなければなりません。しかし同じ曲で勝負するとなれば、それだけプログラムの完成度を上げることに専念できます。また、ジャンプの練習に時間をさくこともできます。実は世界選手権のフリープログラムを振り返ると、演技構成点はネイサン選手よりも羽生選手のほうが上でした。つまりジャンプなどの技術点で大きく差をつけられてしまったのです。逆に言えば、ジャンプを磨くことでさらに加点を狙えるということでもあります。メリットは大きいでしょう」

 

オータム・クラシックの練習後、羽生は報道陣にこう語っていた。

 

「負けたままで終わらせたくなかった。完成させた上で、悔いなくこのプログラムを終えたいと思った」

 

さらに羽生は4回転アクセルの回転を身に着けるため、5回転の練習をしていることも明かしていた。静かな闘志を胸に秘め、彼はネイサンとの一騎打ちの舞台へと進むーー。

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