3月の世界選手権から9カ月、ネイサンと再び対決した羽生(写真:アフロ) 画像を見る

「もう練習したいです、早く。自分の旧採点のころの点数まで抜かれて。めちゃくちゃ悔しいですし、今に見とけと思っています」と振り返ったのは、羽生結弦(25)だ。

 

12月5日、フィギュアスケートGPファイナルのショートプログラムで羽生結弦(25)は昨シーズンと同じ『秋によせて』を選んだ。だが得点は97.43点。いっぽうでネイサン・チェン(20)は110.38点を記録し、12点以上も差をつけられることとなった。7日のフリープログラムでは、4回転ルッツを成功させた羽生。だがネイサンは合計335.30点と、世界最高記録を更新。羽生は、またも届かなかった――。

 

フィギュアスケート評論家の佐野稔さんはこう分析する。

 

「羽生選手のフリーのテーマ曲『Origin』は、元々プルシェンコ選手の『ニジンスキーに捧ぐ』をアレンジしたもの。すべてのジャッジが芸術点で満点をつけた“伝説のプログラム”でした。その伝説を受け継ぎ、トリノに挑んだのです。結果、ショートでは気負いすぎた部分もあったのかもしれません。実際に力が入りすぎてしまったと、本人もコメント。4回転トウループからのコンビネーションジャンプを失敗しましたが、跳ぶ前から『やるぞ!』という気合が伝わってくるほどでしたから。ただトリノに入ってからの彼は絶好調で、ショートも最初の4回転サルコウやトリプルアクセルはすごくよかったと思います」

 

前出のフィギュア関係者も、“今回のグランプリシリーズで得たものは大きい”と語る。

 

「羽生選手の大きな武器のひとつである、失敗してもすぐ立て直せる“リカバリー力”に磨きがかかったように思います。先月のNHK杯でも途中でジャンプを失敗した場面があったのですが、とっさに後半のコンビネーションを大幅変更して優勝していました。どんなに優秀な選手でも、失敗はするもの。大事なのは、その後の対応です。何をどのタイミングに持ってくれば、リカバリーできるか。演技中にそれを考えられる判断力と実行力は、普通の選手にはまずありません。そういう“引出し”が、さらに増えているように感じられました」

 

羽生の今後について佐野さんはこう続ける。

 

「羽生選手にとっての『Origin=原点』はプルシェンコの存在だけでなく、なぜフィギュア好きになったかということにつながっているのだと思います。ジャンプを跳ぶ楽しさや、技を成功させたときの楽しさ。そういった『フィギュアが好き』という思いが、彼の原動力になっています。そして、『負けるのが嫌い』という思いも。それらを忘れない限り、羽生選手の活躍はこれからもまだ続くと思います」

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