全日本で初披露した新プログラムは“打倒ネイサン”のためのプログラムでもあるのだろう。フィギュアスケート評論家の佐野稔さんは、日本人である羽生ならではの演技だと指摘する。
「羽生選手の新プログラムは、SPはロックで西洋音楽の流れをくんでいますが、フリーの『天と地と』は日本調です。SPを“導入”、フリーを“完結”と見立てるとすると、西洋から入ってきたフィギュアを日本人である自分の中で昇華させて大きく開花させた、というストーリーを感じます」
新プログラムに、ある“日本の伝統”を取り入れているのではないか、と教えてくれたのは、羽生の大学時代の指導教授である、早稲田大学人間科学部人間情報科学科の西村昭治教授だ。
「羽生さんから“巫女舞に興味があって、詳しく見学させてもらった”という話を聞いたことがあります。大学入学前後のころの話だったと思います」
巫女舞とは、神道で神事の際に奉納される舞だ。
「巫女がぐるぐる回転して舞台をあちこち移動しながら舞う様子にフィギュアスケートに通じるものを感じたのかもしれません。自分のフィギュアスケートにオリジナリティを出すために、それを前の『SEIMEI』や今回の『天と地と』の表現に取り入れたんじゃないかと思うんです」(西村教授)
日本人である羽生ならではの演技で、打倒ネイサンへ――。今月17~18日にはネイサンが全米選手権に出場し5連覇を達成。羽生は彼の演技をしっかり目に焼き付け、さらなる闘志を燃やしたことだろう。
「女性自身」2021年2月2日号 掲載
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