「北京五輪のことは僕はまだ考えられません。願わくばまずは東京五輪が開催できる現実のものになれば。まずはそれを願っています」
16日に行われた国別対抗選手権のフリープログラム後にこう語ったのは羽生結弦(26)。羽生は3連覇が期待される22年の北京五輪については言及を避け、目前に迫る東京五輪の成功を願っていた。
そんななか、羽生には“フィギュア界への願い”もあった。それは採点制度の改善だ。
昨年、早稲田大学人間科学部通信教育課程を約7年かけて卒業した羽生。在学中、研究者として打ち込んだのが、モーションキャプチャを活用し、フィギュアの動きをデジタルデータ化すること。
ゼミの担当教員で、卒業論文も指導した早稲田大学人間科学部人間情報科学科の西村昭治教授は、羽生が研究によって目指す“目標”について本誌でこう語っている。
《曖昧な部分もあるフィギュアの採点をAIを使ってクリアにする。この研究を続けていけば大がかりな装置も必要なく、普通のテレビカメラでもなんとかなるという可能性を示してくれました。これは本当にフィギュアスケートの歴史を変えるような研究になるのではないかと思います》(’20年12月1日・8日号)
そして本誌は今回、羽生が同学部の学術誌に特別寄稿するにあたり加筆・修正した卒論を独自で入手。論文で羽生は現状のフィギュア界の採点制度への疑念をこう綴っている。
《全ての選手の全ての要素に対して、ガイドラインに沿った評価ができるのだろうか。(中略)特にジャンプの離氷時の評価は非常に曖昧で、審判員の裁量に完全に委ねられているように感じる。実際に、インタビュー等で審判員の判断に苦言を呈している選手もいる》
羽生の怒りはそんな判定制度を“悪用”する選手やコーチにも向けられていた。