稚拙と7回指摘 羽生結弦が卒論で見せた判定悪用選手への怒り
画像を見る 国別対抗選手権でもネイサンに敗れた羽生(写真:アフロ)

 

■「技術的な判定は完全にできる」

 

’84年のサラエボ冬季五輪に出場し、現在は日本スケート連盟のナショナル審判員も務める元フィギュアスケート選手の小川勝さんも羽生の“告発”に理解を示す。

 

「羽生選手の演技は回転も完璧ですが、そうじゃない選手が大勢いるということ。回転不足の判定問題は、厳格なルールがなく、それを見抜けていない審判も多すぎます。グレーゾーンのジャンプをしている選手が多いのも事実です」

 

最大の目標である4回転半ジャンプ成功に向けて、試行錯誤を続けている羽生。今回の国別対抗選手権では挑戦しなかったが、その理由については「僕の気持ち優先よりも、みんなの力になれる演技をしたい」と語っていた。

 

しかし、あるフィギュア関係者はそこにも採点への懸念が影響している、と推測する。

 

「4回転半はまだ試合で誰も成功したことのない大技。仮に成功しても、“現状の採点制度ではきちんと評価されないのでは”という思いもあるのだと思います」

 

果たして、羽生が目指す採点改革が実現する日は来るのか。佐野さんは芸術性の評価などの難しさを指摘しつつもこう語る。

 

「今のテクニカルの部分をAIで正確にフェアに判定し、それをもとに人間が出来栄え点と構成点をジャッジすれば伝統も残ります」

 

羽生は論文終盤で改革の実現に向けて、こう訴えている。

 

《一人のジャンプだけではできないかもしれないが、ISUなどの機関が有力な国の連盟に強化選手を使って、少しずつデータをとることを義務付けしてAIを作ったらジャンプに関してだけではなく、ステップやスピンなどの技術的な判定は完全にできるように感じた。(中略)フィギュアスケートにおいてこのモーションキャプチャーは極めて有用であると考える》

 

羽生の“悲痛の叫び”がフィギュア界の公正な採点につながる日が来ることを願うばかりだ――。

 

「女性自身」2021年5月4日号 掲載

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