■「“もうちょっとだったな”と思う気持ちもある」ーー彼の「美学」を見守りたい
「全部、出し切った。前の大会よりいいアクセルを跳んでましたし。あれが僕のすべてです」
フリーを終えてのインタビューでの羽生の言葉だ。演技後のリンクでのほほ笑みは、達成感の証しだったのだろう。
結果をふり返れば、北京五輪の男子フィギュアでは日本勢の活躍が目ざましく、鍵山、宇野の両選手がメダリストとなったが、絶対王者といわれた羽生不在の表彰台に、言い知れぬ寂しさを感じた人も多かったのではないか。
だが、表彰台の3選手が称えるように、彼がフィギュア界の象徴であることに変わりはない。
羽生がフィギュアを始めた4歳から小2まで指導してきたスケートコーチの山田真実さん(48)は語る。
「私は、4Aに関しても、『思う存分、やりな』という気持ちでいましたし、やり切ったことには本当に感動しました。今後についても、引退が云々とか、これが最後とかじゃなくて、本人が決めることなので、まずは、彼がやっていくことに対して応援してあげたいなと思っています」
本田さんも、
「羽生君が、ここまでやってきたフィギュアの歴史も、また多くの選手に与えた影響もすごく大きなものがあるので、彼の思うように4Aをできなかったとしても、その功績に対しては称賛したいと思います」
羽生は、先の競技後のインタビューでこんな本音も漏らしていた。
「“もうちょっとだったな”と思う気持ちもあるんですけど」
挑戦は続くのだろう。どんな道であれ、彼の貫く美学を今後も見守りたい。
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