■「羽生の“先の次元”にいる4A」
それでは今回、注目されているイリア・マリニンの4Aの完成度はどの程度のものなのか。フィギュアスケート評論家の佐野稔さんに聞いた。
「すごくいいです。羽生選手の五輪での4Aの“先の次元”にいると言っていいでしょう。まず回転の度合いですが、限りなくクリーンに近いです。試合で同じように跳べば、クリーンな4Aだと認定される可能性が高い、と思いました。
そして最後の着氷のところは、“おっとっと”とバランスを崩しているように見えますが、これはまだ右足のみの着氷に慣れていないだけだと思います。完成するのは時間の問題でしょう。
次のシーズンでプログラムに入れてくる可能性も高いと思います。これは、世界初の4A完成の認定を、マリニン選手に抜かれる可能性が出てきましたね」
突如現れ、“羽生超え”に挑む驚異の17歳・マリニンとは、いったいどんな選手なのか。
「両親ともにウズベキスタン代表として五輪に2度出場したフィギュア選手でした。そのため、幼いころからスケートに親しんできたようです。最初に滑ったのは2?3歳のころだといいます。
まだ高校生なので学業と競技を両立する生活のようですが、両親の指導のもと、才能を開花させ、今年は世界ジュニア選手権のチャンピオンになりました。3月のシニアの世界選手権にも初出場し、最終順位こそ9位でしたが、ショートプログラムが終わった段階では4位。シニアでもメダルを狙える実力を披露しています」(前出・スポーツライター)
佐野さんも、マリニンの才能に注目しているという。
「北京五輪の代表にこそなれませんでしたが、今年1月の全米選手権ではネイサン・チェン選手(23、北京五輪金メダリスト)に次いで2位になったほどです。
まだ少年らしい体形ですが、あの体形であそこまでできるのは、すごいと思います。まだこれから体に筋肉がついてくる段階です。両親のほか、ネイサン選手を指導するコーチにも師事しています」
実力だけでなく、その美少年ぶりでもファンの目を引いている。
「童顔で頬に赤みが差した少年らしいビジュアルに、日本のフィギュアファンの間でも『マリニンくん、かわいい!』と騒がれ始めていますよ」(フィギュア関係者)
マリニンは今夏、アイスショー「THE ICE」出演のため、初来日の予定。さらに日本のファンが増えそうだ。