■チーム羽生、AI採点…叶えたい野望の数々
会見で羽生は年齢についても触れた。23歳で平昌五輪を終えてからも成長できているといい、「今がいちばんうまいんじゃないかなって思います」と話す。そして、
「その経験があったからこそ、これからもたとえ自分が30になろうとも、40近くなろうとも……40までスケートをやっているかはちょっとわからないですけど、でもそれまで、今までは“あぁこの年齢だからできなくなるんじゃないかな”って思っていたことがなくなるんじゃないかなって、ちょっとわくわくしています」
40歳までまだ10年以上。成し遂げられることは多そうだ。
羽生には叶えたい4つの野望がある。まず1つが、もちろん“4回転アクセルの成功”。そして2つ目が“アイスショーでの活躍”。
仙台市議会議員であり、スポーツによる地域活性に力を入れている佐藤正昭さんに話を聞くと、
「プロスケーターで“チーム羽生”のようなものを作りたいと本人が言っていると、関係者から聞いたことがあるんです。浅田真央さんみたいに自分のチームで各地を回ってくれればうれしいですね」
さらに3つ目の野望が“AI採点の導入に携わること”、4つ目が“指導者として後進の育成をすること”。
「早稲田大学の卒業論文で羽生選手は、AI採点の導入を提言しており、この分野に今後も携わっていきたいと話しています。また以前、『最終的にはコーチに興味がある』と語っていたこともあります。当面は自分のことでいっぱいいっぱいだと考えているようですが、ゆくゆくは経験や研究成果をフィギュア界や後輩のために生かしていきたいという思いがあるようです」(前出・フィギュア関係者)
特に後進の育成には、多くの関係者が口をそろえて期待を寄せる。
「フィギュア人口をこれだけ増やしたのは、羽生くん。日本の男子に野球やサッカー以外に、フィギュアスケートという選択肢を増やしてくれました。いまや『羽生結弦になりたい!』という小さい子がたくさんいますよ」(佐野さん)
「これからプロになってスケートの幅が広がると思うので、競技では見られなかったいろんな場所で彼が演技を披露していけば、スケートをやりたいなと思う子供が自然と増えると思います。いずれは、インストラクターになってほしいですね」(本田さん)
“ゆづ2世”の養成を世界中でーー。羽生自身の夢と、関係者やファンみんなの夢が重なっていく。
■恩師が明かす幼少期から変わらぬ姿
会見で羽生は、これからの覚悟を次のように話した。
「むしろ、これからがスタートで、どう見せて頑張っていくかが大事だと思っています」
彼は今、新しいことに挑戦しようという野望に満ちあふれている。
羽生の最初のコーチである山田真実さんは、フィギュアスケートを始めたばかりの幼少の羽生を思い出して言う。
「とにかく新しいことに挑戦することがうれしいようで、新しい技や技術を指導すると本当に楽しそうに取り組んでいた姿を思い出します。それが今でも続いているようですね」
挑戦し続ける心。それこそが、150日間考え抜いた彼が見つけた羽生結弦らしさだったのだ。