■「家では、主人に言いたいことを好きにしゃべってもらっています」
前回指揮を執ったときと違い、今シーズンの岡田はベンチで拍手をしたり、満面の笑みを浮かべたりしている。
「今の若い選手はベンチに向かってガッツポーズをして、喜びを表現しますよね。主人もその雰囲気にのみ込まれてしまっているように見えます(笑)。わざとではなく、選手たちに乗せられて自然に笑顔が出ている。感情を出すと気持ちも解放されてスカッとするでしょうし、ベンチが明るい雰囲気であふれているんだと思います」
岡田はごく親しい人と会食するとき、時折、妻への感謝をポロッと口にすることがあるという。
「自分は野球ばっかりして、家のこと何もしてないけど、嫁がしっかり息子の面倒を見てくれたからな。嫁さんのおかげや。遅くまで酒を飲んで家に帰っても、愚痴ひとつ言わへん。嫁がいるから野球に集中できるんや。いつも感謝してる」
三宅さんが力説する。
「岡田はいろいろヤンチャをしてきたけど、陽子さんの手のひらで転がされていたように思います。何があっても動じない陽子さんは、お釈迦様みたいな人ですよ。岡田1人の力じゃ、ここまでの監督にはなれなかったですよ」
クライマックスシリーズを勝ち上がって、日本シリーズへ─。相手は因縁のオリックスが予想される。86歳の今も元気な母への親孝行、そして愛妻のために優勝請負人は2度目の日本一を目指す。
「家では、主人に言いたいことを好きにしゃべってもらっています。精神面を考えると、それがいちばんいいですから。でも、今年はイライラしたり、落ち込んだりしなかったですね。体調も崩さなかった。若い選手が日に日に力をつけての優勝で、主人もやりがいを感じた1年だったと思います。次の目標に向けて、私は今までどおり、主人をサポートしていこうと思っています」(陽子さん)
名将を支え、どっしり構えて41年。アレを成し遂げた陽子夫人は“日本一の女房”となる─―。