■《多くの野球ファンの希望であり続けて》
3月14日、「セコム」の公式Xで長嶋さんが大谷に宛てたメッセージが公開された。同社は3日前にバッター・長嶋さんと大谷投手が対決するCM動画をXで公開。2大スーパースターの時代を超えた“共演”は大きな話題になった。
長嶋さんはそのメッセージのなかで《球場外でも、野球を愛するファンをはじめ多くの方達に寄り添う姿は同じ野球人として誇りに思います。(略)大谷選手、これからも多くの野球ファンの希望であり続けてください》と綴っていた。
「この最後の部分が長嶋さんの最大の願いだと思います。僕らの世代は長嶋さんに憧れて野球を始めた人がほとんど。長嶋さんもそれを大谷選手に託したのでしょう。最後に会った人が大谷選手だったのも監督の強い思いを感じます」
長嶋さんと大谷が初めて会ったのは、’16年12月8日、『スポーツ報知』での対談だった。日本ハム在籍4年目、大谷は10勝&22本塁打など二刀流として10年ぶりの日本一へ牽引。スーパースターへの階段を駆け上がろうとしている時期で、長嶋さんから大谷へ投げかけた言葉はまず「エースや4番としてチームを優勝させることがスーパースターになる最初の条件。負けるチームにスーパースターは生まれない」だった。
「大谷選手は結局、なかなか勝てないエンゼルスからドジャースに移籍しましたね。長嶋さんの言葉が生きているんだと思いますよ」
小俣さんはこの対談には同席できなかったが、長嶋さんは大谷に“一流の流儀”を授けたという。
「“3年間、続けて成績を残したら一人前だ。それを10年続けたら一流だ”と話されたそうです。昨年の世界一のシャンパンファイトで大谷選手は『あと9回しよう!』と言っていましたよね。監督の“10年”という言葉を意識していたのかもしれません。
初対談の約1カ月後、麻布にある監督の好きな中国料理店で、大谷選手と食事したそうです。監督は野球選手とご飯を食べて、野球の話をするのが好き。言葉は多く交わさなくても、野球人同士、心や気持ちで通じるのでしょう」
長嶋さんは大谷について「野球だけが人生のような気持ちが大谷くんは強い。本当に野球を愛しているよね」と話していたそうだ。
「大谷選手も長嶋さんのことを『野球に対する愛情が深い方』と話されていましたが、もう監督は野球がすべてなんです。《野球というスポーツは人生そのもの》という有名な言葉を残していますけど、大谷選手とは年齢を超えて通じるものがあったんだと思います」
対談中に大谷はこう語っている。
《僕は自分が持っている最高のものを出したい。僕自身が出せる全力を打席でもマウンドでも。(グラウンド外では)基本的には変わらないですけど、ただ発言や態度は注意しています。まだまだ長嶋さんのように視座の高い所で物事は見えないですけど、ゆくゆくは必要なのかなと。選手としてだけではなく、どういうふうに見られるのか、どうすれば子どもたちの目標になれるのか。それが大事だと思っています》
長嶋さんは「(大谷の)持っている気持ちのままにやっていければいい。そうすれば自然に大谷くんらしいスーパースターの型ができる」と背中を押したそうだ。
’23年の夏、再び入院を余儀なくされた長嶋さんの病室には、大谷選手のホームランに「すごいな!」「また打ったな!」と喜ぶ長嶋さんの声が響いていたという。
「実は長嶋さんもメジャーリーグ挑戦の夢を抱いたことがあったんです。現役2~3年目のとき、ドジャースの当時のオーナーが来て話をして寸前まで行ったんですが、読売の当時のオーナーにダメだと言われて断念したんです。長嶋さんの『メジャーリーグに挑戦したかったな』という言葉は実際に私も聞いたことがあります。その夢を今、大谷選手がかなえてくれているわけですから、それはもううれしかったはずです」
