長嶋茂雄さん 大谷翔平と“最後の対面”姿で天国へ…専属広報が明かす「病室からのエール」と「託した願い」
画像を見る 57年前、自宅の庭で茂雄さんと遊ぶ一茂

 

■「いつも最高を目指す気持ちを大切に――」

 

長嶋さんは大谷と食事する際に「今日は上海蟹を食べるから」と言って蟹の形をしたサファイアのブローチを左胸にして現れたそう。

 

「監督はいろんなピンバッジを持っていて、洋服なども監督自身が全部コーディネートするんです。外出時はいつも車に服を3種類ぐらい用意しているとか。晴れの日、雨の日、昼間、夜の場合など考えて選ぶらしいです」

 

長嶋さんは大谷にかつてこんな言葉も託していた。

 

《ファンあってのプロ野球。まずファンを大切にする気持ちが必要。それがスーパースターに近づいていくんじゃないかな》

 

「大谷選手もファンを大事にしていますね。子どもたちにサインをしてあげている姿を多く見かけます。監督は“こんなスターになりたい”と思って、子どもたちが野球を始めてくれたらいいなという願いを持っていました。その精神が大谷選手に受け継がれていたら素晴らしいことですね」

 

最初の対談時に、長嶋さんは世界最速投手・チャップマン選手(37、現レッドソックス)の名前を挙げ、大谷に何度も“彼の世界最速球速・170キロを超えて世界新記録を作ってほしい。必ずできる”と語っていた。大谷が「いずれは(世界最速を)出してみたい」と話すと、間髪いれずに長嶋さんが「出してみたいではなく、出すんだよ。精神力をもっともっと強く持ってやれば、その気持ちは(力となって)出ます」「プロとして大切なのは、いつも最高を目指そうという気持ち」とゲキを飛ばしたという。

 

「今、大谷選手にみんなが夢中になるのは“ドラマ”を作って見せてくれるからでしょう。しかも二刀流。長嶋さんもそんな大谷選手に共鳴したから入院中でも大谷選手のことを夢中で応援して、生きる糧になっていたんでしょうね。

 

かつて栗山英樹さんが長嶋さんの田園調布の自宅にやってきて、大谷選手の二刀流について相談した際、監督は『可能性があるならやってみなさい』と後押ししたと聞きました。それが現在のメジャーでの二刀流につながることは監督にとって誇りのはずです」

 

長嶋さんは大谷に会うたびに“最高峰に挑む”スターの心得を繰り返し伝え、エールを送っていたのだ。そして大谷は6月15日の父の日にホームランを2本放ち、メジャー通算250号に到達――。試合後、大谷は“野球の父”長嶋さんへの思いを語った。

 

「実際にお会いしてみて素晴らしい方でしたし、会話していても野球への愛情が深い方という印象を受けた。非常に残念なニュースでしたけど、その情熱を現役の僕らが次の世代につないでいければいいんじゃないかと思います」

 

6月29日、大谷は二刀流復帰後、3度目の登板となるロイヤルズ戦で、メジャー公式戦では自己最速となる101.7マイル(約163.7キロ)を記録した。2イニング27球で1安打1奪三振無失点と好投したのだ。長嶋さんから夢を託され、さらに球速も上がっていくかもしれない。

 

最後に小俣さんは笑顔で言う。

 

「長嶋さんの功績は大きいんです。6月3日、6時39分に亡くなられた。すべて背番号の3で割り切れます。来年からその日はプロ野球全球団が3番のユニホームを着て試合をする“長嶋デー”にするべきだって書いてくださいね」

 

ミスタープロ野球の言葉を胸に、大谷は打席に立つ。「大谷くん、ここまで打ってこい!」、長嶋さんの声が空から聞こえてきそうだ。

 

画像ページ >【写真あり】話をしてくれた専属広報の小俣さん(他6枚)

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