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(写真・神奈川新聞社)

東京電力福島第1原発事故で故郷を追われた人を取り巻く問題を考えるシンポジウム「フクシマ原発事故から5年 避難者の日々、被害の実相」が10日、横浜市中区の横浜YWCAで行われた。子どもと一緒に避難し県内で暮らす母親が、先の見えない生活や健康被害への不安感、住宅支援が打ち切られようとしていることへの憤りを語った。

現在も3千人以上の避難者が県内で暮らしている現実について考えてもらおうと、横浜弁護士会が主催し、約80人が参加した。

福島県内から自主避難している子育て中の母親4人が登壇。自主避難を続けることに「街や親を捨てるのか」「金目当てか」などと心ない言葉を掛けられた経験を明かし、避難者仲間や支援者に支えられていることに感謝の言葉を述べた。

低線量被ばくによる健康不安や家族の事情から故郷に戻りたくても戻れない悔しさ、家族が離れて暮らす寂しさについて語った。

福島県大玉村から避難し、相模原市内で長女と暮らす鹿目(かのめ)久美さん(48)は「放射能が子どもの健康に悪影響を及ぼしたら、私はどう責任を取ったらいいか悩み続けている。避難生活は肩の力を抜く場所がなく、つらい」と訴えた。

同県いわき市から避難し、2人の子どもと埼玉県内で暮らす河井加緒理さん(34)は、自主避難者への住宅無償提供が来年3月で打ち切られようとしていることに触れ、「来年の自分がどうなっているか、展望を描けない。自分は何も悪くないのに、なぜ苦労をしなければならないのか」と声を震わせた。

大阪市立大学の除本理史教授は「避難者の受けた被害と帰還政策」をテーマに講演。「現在の復興政策は不均等で一方的。取り残される人を生み、分断をもたらす。帰りたい人、帰りたくない人の事情をそれぞれ把握した支援が必要」と指摘した。

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