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(写真・神奈川新聞社)

川崎市の多摩川河川敷で市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、傷害致死罪に問われた元職人の少年(19)の裁判員裁判の初公判が19日、横浜地裁(近藤宏子裁判長)で開かれた。少年側は事件現場にいたことは認めたが、「首を切り付けたりはしていない」と無罪を主張。少年3人が起訴された事件で、被告側が起訴内容を否認し事実関係を争う唯一の裁判が始まった。

冒頭陳述で検察側は、主犯格の少年(19)が逆恨みをしていた男子生徒に馬乗りになった際、被告が「かばんからカッターナイフを取り出して渡した」と指摘。主犯格がカッターで男子生徒を切り付けた後に一度は断ったが被告も切り付けたとし、2人との共謀が成立すると説明した。

一方の弁護側は、被告は主犯格が男子生徒を逆恨みしていることを知らなかったとし、「少年は暴行を制止したが、主犯格はやめなかった」と主張。カッターは主犯格が持っていて被告が手渡していない上、「切り付けるよう頼まれても断った」と強調した。

主犯格に対する検察側の証人尋問も行われ、「(被告は)男子生徒を複数回切り付けていた」と証言した。

起訴状によると、被告は昨年2月20日未明、ほかの2人と共謀し、多摩川河川敷で男子生徒の顔面を護岸に打ち付けたり、首をカッターナイフで切り付けたりする暴行を加えて死亡させた、とされる。

殺人と傷害の罪に問われた主犯格は懲役9年以上13年以下、傷害致死罪に問われた無職少年(18)は懲役4年以上6年6月以下の不定期刑が確定している。元職人の少年の判決言い渡しは6月3日の予定。

主犯格に渡したカッターを受け取り、主犯格に頼まれて被害者の首を切り付けた。顔をコンクリートの護岸に数回打ち付けた。

主犯格にカッターを渡しておらず、受け取ってもいない。首を切り付けたり、顔を地面に打ち付けたりしていない。制止したが、主犯格は暴行をやめなかった。

かつての「親友」は、法廷で真っ向から争うことになった。証人として出廷した主犯格は、被告がカッターナイフで被害者を傷つけたと断言。対する被告側は否認の上、これまでの公判で語られていない主犯格の暴行にさえ言及する。審理を見守る遺族を横目に、2人の言い分は大きく食い違った。

「首を切り付けたり、頭を打ち付けたり、ほかの人と何かをしようとしたということはありません」。この日、被告が許された唯一の言葉は、傷害致死罪の明確な否定だった。裁判長から二度聞き返されるほど声音はおぼろげだったが、少年は正面を見据えてそう言い切った。

主犯格は、被告が受け取ったカッターを左手に持ち、四つんばいの男子生徒の首に振り下ろすように切り付けた、と検察側の尋問に詳細に語った。現場で押収されたカッターの刃先は「被告が切ったときに折れた」。「もう少しやれよ」とあおられたとも明言する。

一方の弁護側は、カッターを入れていたとされる被告のバッグを主犯格が持ち歩く防犯カメラの映像から、被告のカッターの供与を否定。男子生徒を一切傷つけておらず、主犯格を制止しようとしたと強調した。被告のズボンとバッグから血液反応がなかった県警の鑑定結果も、無罪の証拠であると指摘した。

さらに弁護側は、これまでの公判で触れられていない主犯格の暴行にも言及。男子生徒の口に現場の土や草を押し込もうとしたり、たばこの火種を顔に近づけたりしたと主張する。

もう一人の無職少年はこれまで、被告がカッターで男子生徒を切り付けていたとされる時間帯に「現場を離れていた」と供述している。被告はこの日、再会した「親友」の証言を淡々と聞いた。

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