(写真・神奈川新聞社)
「やめないで」「ありがとう」。29日夜、横浜スタジアム(横浜市中区)は惜別と感謝の声にあふれた。プロ野球最年長の42歳、横浜DeNAベイスターズの三浦大輔投手が現役生活最後のマウンドに上がった。横浜ひと筋25年の「ハマの番長」の背中はファンの大きな声に押された。
降りしきる雨も関係なかった。最後の勇姿を見届けようと詰め掛けたのは、今季本拠地最多タイとなる2万8,966人。選手だけでなく、多くのファンも背番号18のユニホームに身を包んでいた。観客席に人文字でつくられた「18」が揺れていた。
「あと5年。もっと見ていたかった」。30年来のファンという横須賀市の会社員、海老澤宏勝さん(48)が言う。「何があっても諦めない選手。世代も近いので勇気をもらった。これで最後だなんて…。実感が湧かない」。目は少し赤らんでいた。
平塚市の阿部美紀子さん(68)は3世代で球場を訪れた。家族そろっての横浜ファン。「最後まで見ていられない」と涙ぐみながら三浦投手がデザインしたタオルで顔を覆った。
奈良・高田商業高時代に指導した同校野球部元監督の山下善啓さん(53)もこの日、スタンドで教え子の最後のピッチングを見届けた。「速い球でなくても空振りは奪える。人柄も素晴らしかった」とたたえた。
支え続けた家族も花道を見守った。長男・澪央斗さんは始球式に登板。県内の硬式野球クラブでプレーする中学3年生は、父のユニホームに袖を通して力強い投球を見せ「頑張って」と声を掛けた。
妻の麻由子さんは「球場に来る途中、街中で応援していただいているのを見て泣きそうになった。『お疲れさま、ありがとう』と伝えたい」と話し、長女の凪沙さんも「もうマウンドで投げる姿が見られないと思うとさみしい。本当にかっこいいお父さん」とねぎらった。