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(写真・神奈川新聞社)

 

東京電力福島第1原発事故から5年半。当時の福島県双葉町長・井戸川克隆さん(70)が6日、藤沢市亀井野の日大キャンパスで講演した。責任の所在があいまいにされ、再稼働や帰還政策が推し進められる現状を前に「放射能事故の恐ろしさを認識し、再び起こり得る原発事故への対策を取らなければならない」と警鐘を鳴らした。

 

〈自己防衛の勧め~原発事故からの反省より~ 情報は操作されるので丸のみするな 今すぐ自分のリスクを抽出せよ 国がやってくれると思うな〉

 

中央のスライドに、井戸川さんが自らの経験を基に作成した「教訓」が映し出された。

 

原発事故時、全町民の県外避難を早々に決断したが「99%の住民を1%の町職員が対応するのは無理があった」。防災行政無線の故障で町民への周知は行き届かず、6千人超が避難できる大規模な避難所の確保にも時間を要したという。

 

「入院患者はおむつもなく、看護師の付き添いもないまま、バスに乗せられた。とんでもない負担と我慢を強いてしまった」と、厳しい表情で振り返った。

 

この5年半で、政府は再び原発推進へと向かいつつある。九州電力川内原発と四国電力伊方原発は、「原子力規制委員会の新規制基準を満たした」として、再稼働した。

 

「再び事故が起きたら自治体は市民を守れるのか、疑問が残る」と井戸川さん。町長退任後、福島県と双葉町に対し、原子力災害時における避難生活計画の情報開示請求も行ったが、いずれも回答は「公文書は保有していない」だった。

 

藤沢から約200キロの距離には中部電力浜岡原発が立つ。南海トラフ巨大地震の想定震源域とも重なる。講演会の最後、井戸川さんは「福島の被災者を見て悲しむのではなく、自分事に置き換え、対策を取ってほしい」と訴えた。

 

講演は、市民団体「福島の子どもたちとともに・湘南の会」などが企画。市民ら約70人が聞き入った。

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