(写真・神奈川新聞社)
サッカーJ2の横浜FCは12日、Jリーグ最高齢出場記録を更新し続ける元日本代表のFW三浦知良選手について、来季もオファーを出す方針であることを明らかにした。北川浩史社長は「できる限りうちでというのは変わらない」と話した。
クラブは同日のホーム最終戦で引き分けに終わり、わずかに残っていたJ1昇格プレーオフ進出の可能性が消滅。来季の去就を問われた三浦は「肉体的にも精神的にもかなり厳しい覚悟がないと続けられない」と慎重な姿勢を見せながらも、「高い意識の中で自分がどこまでやれるか。このオフのトレーニングで頑張りたい」と前向きな姿勢も示した。
■ホーム最終戦途中出場 長男より年下の選手と
流れは変えられなかった。横浜FCのホーム最終戦、後半16分。背番号11が投入された。49歳の生きる伝説が、また一つリーグ最年長出場記録を更新した。
だが、ボールはことごとく頭を通り越していく。スコアレスの展開。しかも、優勢だった前半から一転、後半はPKを献上するなど、防戦が続く。1点を奪いたいチームは、ともに190センチの大型FWイバ、大久保にロングボールを集めようとする。これもいまいち徹底できない中、スルーパスを引き出そうとする三浦の動きは徒労に。「DFの間を狙って攻撃のリズムを作ろうと思ったけど、だめだった」。ボールタッチは数回。シュートは1本も打てなかった。
結局0-0のまま試合は終わり、わずかに残っていたプレーオフ進出の可能性も消え、リーグ1試合を残して「終戦」となった。
49歳。オフが近づけば、自然と去就の話題が向けられる。チーム側は北川社長、奥寺康彦会長ともに、「(三浦選手に関しては本人が現役で)できる限りはうちでやってほしいのは変わらない」とし、契約延長オファーを出す意向を示す。
■本人に水を向ける。
「年齢的に現役を続けるのは、肉体的にも精神的にもかなり厳しい覚悟がないとできない。それは、試合で戦えるかというだけではない。年間を通して、キャンプや練習など、日々そういう厳しさの中でできるかということ。最終戦を戦って、休んでから。トレーニングの中で、自分が戦う気持ちを持ってどこまでやれるのかを確かめる。今からのトレーニングの中で頑張っていきたい」
慎重に言葉を選びながらも、やはり前向きなニュアンスがにじむ。事実、今季は途中出場が中心ながらも、この日で20戦目。ここ5年で自身最多の出場記録をマークした。50歳を目前にして、出場機会はむしろ増えているのだから恐ろしい。
この日のゲーム、スターティングメンバーの平均年齢は27・64歳だった。記者が「カズさんの子どもでもおかしくない選手が当たり前になっていますね」と問うと、「来年になると、うちの長男より若い選手が入ってきますからね」。すぐさま続けた。
「自分の息子くらいの子たちと競ったり、走ったり。すごく楽しいですよ。走るのを競争するのとかは、きついですけど、でも楽しい。すごく楽しいですよ」
■どうしても、やる気満々に聞こえてしまう。
この日の試合。そもそもJ1昇格プレーオフ進出の条件は、残り2試合を連勝し、6位との得失点差15を逆転するという不可能なものに近かった。三浦が「あと1歩2歩」の原因としたのは、むしろ前節の敗戦だった。
「たらればだけど、前回の岐阜(12日時点で19位)に負けていなければ、可能性が全然違った。結局今季は、岐阜と讃岐に勝ち点6を落とし、今日もJ3降格争いをする金沢に引き分け。昇格を狙うチームとしては、下位との勝つべき試合で勝ち点を落としすぎ」
J2を勝ち抜くのに不可欠な、勝負強さ。どうすれば手に入るかという質問を向けると、「チームとしてスタイルを築くこと」と即答した。
「J2でも自分たちのスタイルを築いてJ1に上がっていったチームは、J1に残っている。長いリーグ戦の中で、例え負ける試合があっても、スタイルを貫いて負けたならある種、仕方ないと。うちは勝った試合の中でもイバ(今季加入し、現時点で18得点を挙げ得点ランク3位の大型FW)がいたから勝てたというものが多かった。スタイルをつくるのは大変。でもチームとしてどういうスタイルを目指すのかを明確にしないと、J1に上がるのは難しい。今日みたいな内容では、次の最終戦も厳しいと思う」
横浜FCでの12シーズン目が終わろうとしている。読売クラブとヴェルディ時代の延べ9年を越え、プロとして最も長く過ごすチームだ。「横浜FCのカズ」が、来年も見たい。