「この世界の片隅に」の一場面(C)こうの史代・双葉社
「この世界の片隅に」製作委員会(神奈川新聞社)
ヨコハマ映画祭の本年度日本映画ベストテンと各賞が、実行委員会から発表された。注目の作品賞は「この世界の片隅に」。同映画祭史上初めて、アニメ作品がベストワンに輝いた。主演男優賞は三浦友和さんと柳楽優弥さん、同女優賞は筒井真理子さん。三浦さんは31年ぶりの“ヨコハマ凱旋(がいせん)”になる。表彰式と「この世界の片隅に」などを上映する映画祭は来年2月5日、横浜・関内ホールで。
同映画祭は38回目。スポンサーのないファン手作りのイベントとして知られ、いち早く新しい才能を発掘することで映画界の注目度が高い。各賞は映画評論家ら37人の投票で決まった。
「この世界の片隅に」は太平洋戦争末期の広島・呉を舞台に、絵を描くことが好きなヒロイン「すず」の生活と思いを繊細な絵作りでつづる。平穏な日々を破壊する米軍機の空襲シーンは息をのむ迫力。「すず」の声を担当した「のん」さんに審査員特別賞が贈られる。
主演男優賞は「葛城事件」で横暴な父親をすさまじい気迫で演じた三浦友和さんと、「ディストラクション・ベイビーズ」で暴力衝動に身を委ねる若者を鮮烈に見せた柳楽優弥さんが分け合った。三浦さんは「台風クラブ」で助演男優賞(1985年度)を手にして以来の受賞。主演女優賞は「淵に立つ」で見知らぬ男に運命を狂わされる人妻に扮(ふん)した筒井真理子さんが受賞した。
映画祭では午前11時から「ディストラクション-」を上映、午後2時から表彰式、4時20分から「湯を沸かすほどの熱い愛」、6時40分から「この世界の片隅に」を上映する。
入場料3千円、前売り2700円。一般前売りは12月17日から。問い合わせは実行委員会・電話045(430)1845。
<2016年度日本映画ベストテン> ※カッコ内は監督
【1】この世界の片隅に(片渕須直)
【2】湯を沸かすほどの熱い愛(中野量太)
【3】ディストラクション・ベイビーズ (真利子哲也)
【4】シン・ゴジラ(庵野秀明)
【5】永い言い訳(西川美和)
【6】淵に立つ(深田晃司)
【7】怒り(李相日)
【8】聖の青春(森義隆)
【9】葛城事件(赤堀雅秋)
【10】君の名は。(新海誠)
<各賞> ※カッコ内は対象作品
◇作品賞 この世界の片隅に
◇監督賞 中野量太(湯を沸かす-)
◇新人監督賞 真利子哲也(ディストラクション-)、杉山泰一(の・ようなもの のようなもの)
◇脚本賞 中野量太(湯を沸かす-)
◇撮影賞 佐々木靖之(ディストラクション-)
◇主演男優賞 三浦友和(葛城事件)、柳楽優弥(ディストラクション-)
◇主演女優賞 筒井真理子(淵に立つ)
◇助演男優賞 菅田将暉(ディストラクション-、ピンクとグレー、二重生活、何者)
◇助演女優賞 杉咲花(湯を沸かす-)
◇最優秀新人賞 太賀(淵に立つ)、小松菜奈(ディストラクション-)、村上虹郎(ディストラクション-)
◇審査員特別賞 のん(この世界の片隅に)
◇特別大賞 庵野秀明(シン・ゴジラ)
=敬称略