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(写真提供・川端康成記念会/神奈川新聞社)

 

後半生を鎌倉で過ごしたノーベル文学賞作家、川端康成(1899~1972年)が収集した文豪の書など76点が、鎌倉市の旧宅で見つかった。コレクションに名を連ねるのは夏目漱石や芥川龍之介、島崎藤村ら名だたる文士たち。同時代の作家に寄せる親しみや敬意を示すとともに、川端の目を通した「日本近代文学史」にもなっている。

 

川端に関する資料保存や研究を手掛ける川端康成記念会(川端香男里理事長、同市長谷)が24日に発表した。旧宅の敷地に立つ資料庫「川端康成記念館」(非公開)で昨年11月末に偶然見つかり、同会が12月上旬に概要を調査。掛け軸や額など書は52点に上り、書簡や絵画などもあった。直接書いてもらったり、古物商から購入したりと、入手経路はさまざまという。

 

漱石の書は、1914年に友人の森円月に贈った五言絶句の漢詩で、軸装され木箱に入っていた。芥川が室生犀星に宛てた書簡は、東京・田端にあった文士村の会合「道閑会」に誘う内容。自身を「澄江堂」、犀星を「魚眠洞御主人」と記すなど、親しさがうかがえる。これらの多くは存在が知られ、未発表書簡には当たらないが、実物の存在が改めて確認された形だ。

 

同会の水原園博理事は「同時代の作家への親しみに加え、書に対する尋常でない思いも読み取れる」と指摘。川端は書に人格を見いだし、収集にのめり込んだという。「なぜ膨大な書を集めたかを研究し、川端の創作をより立体的に捉えたい」と話していた。

 

同会は16年前から川端に関する資料を調査、公開している。今回発見された書の一部は、今夏に盛岡市の岩手県立美術館で公開される計画がある。

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