(写真・神奈川新聞社)
氷川丸(横浜市中区)で、普段は非公開の「旧三等食堂」を使い、現代美術の作品が展示されている。横浜美術館(同市西区)などを会場に開かれている現代美術の国際展ヨコハマトリエンナーレの関連企画「ヨコハマサイト」の一つで、横浜の歴史や開港時の面影が残る場所を通じ、街を再発見する試みだ。
氷川丸見学コースの終盤にある旧三等食堂に展示されたのは、田村友一郎さんの「γ(ガンマ)座」だ。モールス信号の音とそれを朗読する外国人男性の声が聞こえ、電光掲示板で文章が流れる。氷川丸、日枝丸、平安丸の「三姉妹」の運命や関東大震災、横浜博覧会といった過去と現代の出来事が繰り返し語られる。展示のために持ち込まれた海図や幽霊船、もともとあった大きな地球儀などが置かれ、空間全体が作品になっている。
ヨコハマサイトは、トリエンナーレ開催地の横浜に、もっと着目しようと企画された。
同展ディレクターの1人で、同美術館副館長の柏木智雄さんは「横浜が開港したことが開国につながった。歴史を思い、深める仕掛けができないかと考えた」と説明する。街の中に広がっていくことも意識し、外国人墓地(中区)、掃部山公園(西区)など、いずれも開港とゆかりのある両区内の8カ所を対象に選んだ。
この企画は同展の鑑賞者だけでなく、横浜で暮らす人にも再発見を働き掛けているという。柏木さんは「いずれも誰でも行くことができ、普段は見逃しているかもしれない場所。横浜の歴史から現在を見るきっかけになるだけでなく、住んでいる人も見逃していた何かに気がつくことにつながれば」と話す。
氷川丸の入場料は300円。作品を公開する11月5日まで、トリエンナーレのチケットを提示すると無料になる。月曜休み。問い合わせは、ハローダイヤル電話03(5777)8600。