(写真・神奈川新聞社)
国政選挙の投票率で山北町が県内トップを走り続けている。直近の昨年7月の参院選でも、同町が64.18%(県平均55.46%)で開票区別投票率順位の1位を獲得。過去も県平均を10ポイントほど上回っている。ただ、町選挙管理委員会が特別な啓発活動をしている様子はなく、投票所の数も14カ所と特別多くない。投票率の低さが全国的に問題視される中、高い投票率を維持するのはなぜか-。
県選挙管理委員会の資料によると、衆参それぞれの過去5回の選挙で、山北町が首位の座を明け渡したのは1度だけ。2005年の衆院選は75.33%で、松田町の80.14%に上回られたもののそれでも2位。10年の参院選では他の開票区が60%台以下の中で唯一80%台に乗せている。
町選挙管理委員会は投票率の高さについて「高齢者が多い土地柄、『投票に行かなければならない』という風土が根強く残っているのでは」と推測する。確かに、町を歩いてみると、有権者からは「国民の義務。選挙くらいしっかり行かないと駄目」「投票に行かないのは無責任」といった声が聞こえてくる。
同町玄倉の三尋木克己さん(69)は「投票には毎回行く」と話す。「これだけ人が少ない地域だと行かないとまずいという気持ちになる」と笑いつつも、投じる票にはいつも地域を良くしたいとの期待を込めているという。
同居する娘が在宅しているときは一緒に投票所に連れ立っていく。「『自分は関係ない』と思うのではなく、自分の考えをしっかり持って、投票という形で示してほしい」
同町中川の湯川満代さん(79)は毎回受け付けが開始される午前7時ごろ、夫と一緒に投票所へ足を運ぶ。「地域の問題を解決する懸け橋になってくれると思うから、地域のことを考えてくれそうな人を応援したい」と話す。
若年世代の投票率が低いことについて「都会の若い人は仕事で忙しいのかもしれない」と優しい。それでも「誰を選ぶかは、皆の責任。自分は年を取っていくが、残された者が苦労しないように、しっかり選びたい」と力を込める。夫が体調を崩しているが、体を支えながら、今回も2人で投票に行くつもりだ。