(写真・神奈川新聞社)
港ヨコハマを代表する観光スポットとして知られる横浜赤レンガ倉庫(横浜市中区)。100年以上前に建設され、関東大震災や米軍による接収などを経て、文化・商業施設としてリニューアルしてから今年で15年の節目にあたる。これを記念し、横浜シティガイド協会が11月に開催した歴史ガイドツアーに同行した。
同協会は、来年3月まで毎月1回のツアーを企画している。初回の11月15日は「線路を巡って横浜赤レンガ倉庫へ」。JR桜木町駅に集合しドックヤードガーデンや帆船日本丸、汽車道を経由し赤レンガ倉庫へ向かうコースで、十数人ずつ五つのグループに分かれて歩いた。記者は、同協会理事でガイド歴8年の白石祥雄さん(70)が率いるグループに参加した。
「ここは昔、ウインナープロムナードと呼ばれていました。上から見ると、ウインナーのような形をしていたからでしょうね」。1911(明治44)年に開通した臨港鉄道の線路跡を整備した汽車道を歩きながら、白石さんは言った。構成する三つの橋梁(きょうりょう)のうち、「港三号橋梁」は昭和初期、近くにあった旧生糸検査所の引き込み線に架設されたことなども教えてくれた。
赤レンガ倉庫の敷地へ到着し、まず向かったのが「旧横浜港駅プラットホーム」。明治時代に横浜税関の荷扱い所として造られ、20(大正9)年に駅となってからは、東京駅から初の汽船連絡列車が乗り入れたそうだ。
続いて「旧税関事務所遺構」へ。レンガ造り3階建てゴシック様式の建物で、14(大正3)年に建設された。関東大震災で床や屋根が焼失。埋め戻され、荷さばき用地となっていたが、赤レンガパークの整備に伴い発見されたという。辺り一帯には、当時の石畳や鉄道レールも残っている。
赤レンガ倉庫1号館には日本最古の荷役用エレベーター1基が保存されている。白石さんによると、米国オーチス社製で両端に階段が設けられ、中央部が滑り台のような構造。この傾斜を活用して荷物の上げ下ろしをしていたという。
このほか、建物内部にある1枚約400キログラムもの防火戸や、この防火戸をスムーズに開閉させるための吊戸車(つりどぐるま)なども見学。最後に創建当時に使用されていた瓦を見せてもらい、約2時間半のツアーは終了した。
「横浜市民でも、今の赤レンガ倉庫や、表面的なことしか知らない人は多いと思う。ガイドツアーを通じて、歴史に触れてもらえたら」と白石さん。市内から参加した68歳と67歳の女性2人組は「今まで知らずに通り過ぎていたものばかり。とても楽しかったし、ためになった」と笑顔で話していた。
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今後の予定とテーマは次の通り。12月15日「レンガ建築探し」▽1月15日「文明開化が色濃く残る馬車道」▽2月15日「ハイカラ建物を巡る」▽3月15日「港ヨコハマの震災復興をたどる~フェニックスを求めて~」。午前9時半集合、参加費500円。詳細は同協会ホームページ。問い合わせは、同協会電話045(228)7678。
◆横浜赤レンガ倉庫 国の保税倉庫として1911年に2号館が、13年に1号館が完成した。第2次世界大戦後、米軍に接収されるも56年に解除。港湾倉庫として再開したが、次第にその役割は低下。89年、いったん幕を閉じた。横浜市は、市民の憩いとにぎわいの空間とする方針を決定、改修工事を経て2002年4月、文化・商業施設として生まれ変わった。