(図・神奈川新聞)
旧維新の党が2016年3月に解散する直前、同党県総支部が政党交付金の残金464万円を新設団体に移動させていたことが16年分の政治資金収支報告書で分かった。原資が税金の政党交付金の残金は解散時に国庫への返還対象となる。識者は「法に反していないが、解散直前の交付金移動は返還逃れで『法の抜け穴』。制度の問題は大きい」と批判している。
資金の移動は、維新の党が民主党との合併に正式に合意した16年2月26日以降に相次いだ。
旧維新の党県総支部は政治団体「かながわの未来を創造する会」に、政党交付金464万円を含む910万円を寄付。創造する会は、党と県総支部の解散2日前に設立されたばかりの団体だった。
県総支部と創造する会で代表を務めた現立憲民主党の青柳陽一郎氏(衆院6区)は、会設立と解散直前の寄付について「16年7月に参院選を控え、党が解散しても県支部的な組織はあったほうがいいと考えた。党は変わっても活動は継続しており、ご理解いただきたい」と説明。創造する会は、党解散から半年後に計386万円を元所属議員に寄付し、16年11月に解散している。
ただ、政党助成法は政党交付金について、総務相が支部解散時の残金の返還を命じることができると規定。政治資金に詳しい上脇博之神戸学院大教授は「寄付自体に違法性はないが、解散直前に新たな団体に残金を移動させたのは、政党交付金の返還逃れに映る。創造する会は短期間で解散しており、会をトンネルにした政治資金の還流ではないか」と疑問視する。
政党解散直前の交付金移動は県内で過去にもあった。14年11月に解散したみんなの党県総支部は、解散前日までに政党交付金の残金から計1600万円余りを組織対策費などとして所属議員に支出している。上脇教授は「交付金が政党の都合によって、納税者が本来渡したつもりのない団体に移ることがないよう規制が必要だ」と話している。
◆政党交付金 政党助成法に基づく公的な助成金。献金を通じた特定の企業や団体との癒着を防ぐため、政治改革の一環として1995年に導入された。国民1人当たり250円を直近の国勢調査に基づく人口に掛け合わせて年間の総額を算出。毎年約320億円が各党の国会議員数や、衆院選と参院選の得票率に応じて配分される。政治活動の自由を尊重し、原則として使途は制限されないが、借金返済や貸し付けには充てられない。各党・支部は使途の報告を義務付けられている。