(写真・神奈川新聞)
県教育委員会は公立夜間中学校の新規設置に向けたニーズ調査に初めて着手した。既に開設している横浜、川崎の両政令市を除く、県内31市町村の公共施設などにアンケートを25日に配架、1カ月の実施期間に郵便やファクスなどで回収する。義務教育未修了者の学び直しや日本語習得を志す外国人、現在不登校の生徒の受け入れなど多様なニーズを把握し、地元の市町村に設置を促す。
夜間中学は、戦後の混乱期に義務教育を十分に受けられなかった高齢者、不登校のまま過ごした形式卒業者、高校進学や就職のために卒業資格を必要とする外国籍の若者らの学びの場として、その役割が求められている。
昨年12月に成立した教育機会確保法により、都道府県に1校以上の設置が目標として示された。県教委は5月、市町村教委に呼び掛けて協議会をつくり、新規開設場所や運営法の検討を進めている。
今回のニーズ調査はその一環。アンケート用紙には個人名の記入を求めず、年齢や居住市町村、希望する学習内容を書くだけ。配架場所は市役所、公民館、図書館、フリースクールなどの支援施設など。
また、各地で入学者が増加している外国籍の若者向けには、かながわ国際交流財団が運営する関連メールサービスを通じて中国語、スペイン語など6言語で調査内容を掲載して同様に回答を受け付けるという。
県子ども教育支援課は「協議会に参加する16市町でも夜間中学に対する関心度にばらつきが見られる。ニーズ調査の結果により、入学希望者が多い地域が明らかになってくれば、検討作業が今後具体化するだろう」と説明している。
県内にある公立夜間中学は横浜市立蒔田中(南区)、川崎市立西中原中(中原区)の2校。今年5月現在、蒔田は3学級22人、西中原は3学級24人がそれぞれ通学しているが、受け入れは地元市在住・在勤者に限られている。協議会の検討作業では横浜・川崎以外、県内では3カ所目の夜間中学の新設を当面目指している。
厚木市内の自主夜間中学「あつぎえんぴつの会」でスタッフを務める前文部科学事務次官の前川喜平さんは「アンケートを配っただけでは、潜在的な入学希望者のニーズまで把握するのは難しい。窓口の職員が書類に字を書けない人に声を掛けたり、引きこもりの若者にはネットで告知したり、工夫が必要だ」と話している。