image

泡盛の酒粕を混ぜ合わせた飼料で育てた「久米島赤鶏」を県内外に出荷する山城昌泉さん=久米島町具志川の久米島赤鶏牧場

 

【久米島】沖縄県久米島町唯一の養鶏農家、山城昌泉さん(35)が生産する、泡盛の酒粕(さけかす)を飼料に混ぜて育てた「久米島赤鶏」が本土市場で評判だ。高校卒業後、久米島を出たが、赤字が続いていた実家の養鶏を立て直すため10年前に島に戻った。飼料の開発や販路の開拓、経営基盤の強化などの改革を実施して「久米島赤鶏」のブランド化を図り、黒字化を達成した。

 

両親が養鶏を始めたのは17年前。黒毛和牛の繁殖や電照菊の栽培などと並行して始めたが、離島ゆえの割高な流通コストや飼料の高騰などで経営が悪化した。両親の窮状を聞いた山城さんは家業を継ぐ決意を固め、東京の酒屋を辞めて25歳で島に戻った。経営再建に向け飼育方法と収入と支出のバランスを見直した。

 

飼料コストを下げるために目を付けたのは、産業廃棄物として廃棄されていた地酒「久米島の久米仙」の酒粕。従来の穀物飼料に混ぜ合わせ、鶏に与えてみたが、水分が含まれたままの酒粕だったため鶏が下痢をするなど問題が発生した。

 

その後、久米島の久米仙が産業廃棄物の量を減らすため酒粕を固形化することになったため、その酒粕を砕いてウコンやゲットウなどと混ぜ合わせるなど試行錯誤を重ね独自の飼料を開発した。発酵した菌の働きで鶏舎の臭さがなくなり、鶏のストレスが軽減し、肉質が改善したという。

 

販売価格も見直した。会計士の知人に財務諸表を見てもらった結果、「卸価格で1羽当たり最低でも2千円で販売しなければ利益が出ない」と指摘された。その価格で販売すると、発送料込みで1羽当たり約4千円。店頭価格では安価なブロイラーと比較し、2~3倍高くなり、当初は「高すぎる」と県内の購買者から不評を買った。

 

山城さんが育てているのはフランス原産の赤鶏「レッドブロー」。通常のブロイラーは40~50日で出荷するが、山城さんは平均約100日かけて約2キロになるまで育てる。酒粕を飼料に混ぜたことで独特の臭みが抜け、肉質に弾力が出るなど品質が向上した。

 

なかなか買い手が付かず、行き詰まりを感じる時期もあったが、5年前に東京近郊の人気料理店に食品を卸すバイヤーと知り合ったことで販路が一気に拡大した。現在は県内外に1カ月約千羽を出荷する。売り上げは10年前に帰郷した頃に比べ、2倍近くの年間約2500万円まで伸び、黒字に転換した。「うまみが強く、肉質が良い」と県外で高い評価を受けたことで、“逆輸入”の形になり、県内でも取り扱う店が増えた。

 

山城さんは「離島の農業も工夫次第で潤うことができる。久米島赤鶏を海外にも売り出したい」と話した。(松堂秀樹)

関連カテゴリー:
関連タグ: