第48話 母とお風呂の関係
アルツハイマー病の症状が出てから母は、極端にお風呂に入らなくなってしまった。
母の自主性に任せると、今のところ2ヶ月に1回ぐらいの割でしか、お風呂に入らない。
ただ、本人の意識では、昼間に3日おきぐらいに入っていると思っているらしく、ここら辺りは、とても興味深い。
2月28日にNHKの「あさイチ」で共演(?)させて頂いた国立長寿医療センターの認知症専門医、遠藤英俊先生は、著書<認知症•アルツハイマー病がよくわかる本:主婦の友社>の中で、こう書かれている。
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入浴を嫌うのは、アルツハイマー病の人に多いようです。その背景には、次のようなことが、考えられます。入浴が<服を脱ぐ、湯につかる、からだを洗う、からだをふく、服を着る>とたくさんの動作が、必要なために、かなりの集中力が要求されること。・・・もう一つは、自分が汚れていることに無頓着になることです。
な〜るほど、と納得してしまう。
実は、母は、本当は、風呂嫌いなのでは、と私も妹も考えている。
昭和31年、父の所に嫁いで、即姑(父の母)と一緒に暮らし、母屋のすぐ向かい側には、伯母(父の姉)夫婦の家があった。伯母夫婦の家には、お風呂がなかったので、毎晩、母屋にお風呂をもらいに来ていたのである。そして、半年に1回船を降りて、母屋に滞在する叔父(父の弟)。嫁の母は、さぞかし、忙しかったことだろう。
亡くなった伯母の夫は、毎晩、夜遅くまで酒を呑み、お風呂をもらいにくるのが、かなり遅かったらしい。時には、あまりにも遅くなって、母自身が、お風呂に入れなかった夜でも、風呂掃除は、母の役目だった、と母は、今でも愚痴る。そして、叔父だけは、そんな母を気遣い、よく私(3~4歳)を連れ出し、近くの銭湯に一緒に行ってくれたので、とても助かった、と言う。
要するに、母のお風呂に対する記憶は、あまりいいものではないのだ。
そんな母にアルツハイマー病の症状が、出て、たくさんの集中力が必要な入浴から益々遠ざかってしまったのは、仕方ないことなのかも知れない。
しかし・・・こうやってひも解くように考えると、今の母の有り様には、それなりの理由が、あるのではないか。
アルツハイマー病なんだから、と安易に一括りで考えては、いけない、とつくづく思うのである。
2011.3.12 (土)更新予定!<動画47:アルツハイマー病の母の久し振りの入浴と孫たち>