20歳でレコード会社と事務所から解雇された私、当時を振り返って……
Q:以前のインタビューで、20歳のころ、レコード会社との契約が切れたときに「こんな才能あふれる私を切っちゃうの?」と思った、とうかがいましたが、9年後の今、当時の心境とはまた違うのではないですか?
そうですね、当時は「なんで私を?」という部分もすごく強かったのは確か、ただ、そのころの私は、周りのスタッフのみんなが何をしているのか、正直わからなかったんです。けれど、インディーズ時代、ラジオ局にCDを送ったり、出演交渉をしたり、デザインや通販業務など、いままでやったことのなかったことをいろいろ経験してみてわかったんです。昔、私の周りで動いてくれていたスタッフのみんなも、私の歌を広めようといろいろ努力してくれていたんだなぁ、って。
「存在の理由」というか、みんながいてくれて、周りに支えられて自分がいるんだなあ、というのをすごく感じられるようになりました。こうやって、ラジオとか、テレビとか出られるのも、一生懸命交渉してとってくれたのかなと思うと、やっぱりその機会を大事にしたいし、それを通して、自分自身もいろんな人に歌を届けられるから、一生懸命やろうという気持ちが強くなりましたよね。 |
Q:高校を卒業してすぐに音楽業界に入ったんですもの、社会経験もなく、大人たちの中で何をどうしたらよいかわからないのも、当然といえば当然ですよね。でも、今なら与えられたチャンスを大事できるのではないですか?
意識の問題だとは思うのですけど、チャンスを大事に、出せる限りのものを出す。昔は用意されているというか、もう本当に、ポンと連れて行かれて、「はい、どうぞ!」みたいな感じでしたから、私も「わぁ~!テレビだ、やっほ~!」って重みみたいなものがまったくなくて。うまく表現できませんが、遊びに行っている感覚だったというか、自分さえ楽しければいいや、という感じだったと思うんです。テレビを見ていても、その向こうでいろんな人が見てくれている、というのも感じなかったんですよね。
Q:周囲のスタッフに対してだけでなく、視聴者への意識も違ってきた?
そうですね。いまは、自分に向けられたカメラの奥にたくさんの人がいる。そして、その人たちにも自分たちの生活があって、何かで思い悩んでいるかもしれない。そんなときにこの歌が届いたら、少しでも元気になってくれるのかな……って。そういうとこまで想像できるようになったからこそ、一つひとつのチャンスを大事にしなきゃなって思うようになりました。
Q:テレビを見た方たちの反響も大きかったのでは?
ファンのみなさんはもちろんですけど、今までお世話になった業界の方からもたくさんお電話をいただきました。「頑張ってるね、こっちもうれしいよ」みたいなことを言ってもらえると、これまで応援してもらった分、すごくうれしくて。恩返しではないですけど、自分が頑張れば、こんなふうに喜んでくださる方がたくさんいるんだなぁ、というのもすごく感じました。
Q:自分一人、ただ歌が好きだから歌っていればいい!と思っていた昔とは違いますね。
そういう部分は、10年前とはかなり変わりましたね。そのころは、「私が歌を作って歌っているんだ!」「私が!」「私が!」といった部分が強かったですから……。でもいまは、自分が伝えたいこと、作りたいものはもちろんありますけど、それができるのも聴いてくださる方がいて、そして、届けてくれる人たちがいるっていうのはやっぱり大きいなあって感じますね。
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